日本一「滝」多い山形県、空海が命名「玉簾の滝」が大雨で削られ形変わる…他の滝も土砂流入で近づけず
7月の記録的大雨で、山形県酒田市にある観光名所の滝3か所全てが被害を受けた。人気の「玉簾(たますだれ)の滝」は形が変わり、残る2か所は道が土砂崩れなどの被害に遭い滝に近づけなくなっている。25日で発生から3か月。紅葉のピークを前に、地元住民は「きれいな自然で観光客を受け入れたかった」と肩を落とす。
滝の数が日本一多い山形県で、水がほぼ垂直に落下する「直瀑(ちょくばく)」として最高となる、落差63メートルを誇る玉簾の滝(同市升田)。1200年前に弘法大師・空海が発見して命名したとされる。
その名瀑は7月25日の大雨を受け、周囲の土砂や木が流出し、滝の上部が2メートルほど削られてしまった。滝周辺の保全活動をする地元自治会の池田善幸さん(70)は「滝が少し低くなった上、滝の形が変わり、勢いも弱まってしまった」と語る。
散策路付近には大量の土砂が流れ込み、滝近くのフェンスやライトアップ用の土台もなくなった。
県や市は道路や水道などの復旧を優先しているため、滝周辺の復旧の見通しが立たず、地元の自治会と建設会社が協力して滝つぼや散策路の土砂を撤去してきた。費用の約100万円は自治会の負担となりそうだ。池田さんは「災害後も県内外から観光客が来るので、自分たちで直すしかなかった」と話す。
県は、玉簾の滝を含む県内100の景勝地を「おすすめビューポイント」に指定しており、現地に設置したQRコードを読み込むとその場所にまつわる物語を読むことができる。玉簾の滝のアクセス数は遊佐町の「丸池様」に次いで2番目に多く、県内指折りの人気観光地といえる。
14日には、県外からの観光客が次々と訪れる中、ボランティアが散策路周辺の土砂撤去作業を行った。大手飲料メーカー「伊藤園」の呼びかけで約50人が集まり、たまった土砂を2時間ほどかけてスコップやつるはしで取り除いた。
参加した東北公益文科大の学生(19)は「大雨の前に来たことがあり、形が変わったと聞いてショックだった。復旧に少しでも役立てて良かった」と話した。