仕事ができる人は稼ぎ、できない人は肩を叩かれる…生き残りを賭けた「サバイバル時代」に突入した日本企業で会社員が持つべき「心得」とは【人材のプロが解説】
実力主義が広がる一方で、年功序列からの大幅な転換に抵抗も
最近は一部のクリエイティブ(エンジニア、デザイナー、IT技術者など)の方のなかに、新卒の初任給が年俸換算700万円から1,200万円というような会社もめずらしくなくなってきました。 年齢やポストに関係なく、活躍に応じた評価を適切にしようとすると、過去にベースとなってきた評価制度というのは無用の長物になってしまいます。というより、むしろ阻害要因になってしまいます。 しかし、度合いはともかくとして、長幼の序をわきまえる、いわゆる「年功序列」的な考え方を急激に180度転換するということは、年配の方だけでなく若い方にも一定の抵抗があるようです。 そのため制度設計を現代風にアレンジすることに、どの会社も多大な苦労をしているようです。やはり長年染みついたものを根底から変えるというのは大変なパワーを擁することで、それはどのような事象でも同じことなのでしょう。
人口減少に歯止めがかからず、低成長時代を歩む日本
では日本の進むべき道はどこにあるのでしょうか。我が国はすでに成熟国家となっています。現状として「政治がリーダーシップをとった新しいビジョン」に基づいた国家像や経済像が明確になっているわけではありません。 1年間に40万人以上という人口減少に歯止めがかからない状態が続いているわけで、確実に低成長の時代になっています。この低成長というのは、毎年同じような努力をしているだけでは、状況がどんどん悪くなっていくということを指します。 こういう時代に高い業績を上げ続けるには、非常に高いレベルでの努力や成果が求められるので、すべての人が望ましい結果を出せるわけではありません。それと同じように毎年均等に努力しても状況が悪化する人のほうが相対的に多くなるわけです。ですから、マイナス成長のごとく厳しいと言い換えられることになります。
生き残りを賭けた「サバイバル時代」に突入
このように、どの企業も生き残りを賭けたサバイバルのなかに身を置くことになります。以前のように多くの従業員を均等に抱えていく力をほとんどの会社が持ち合わせていません。 わかりやすい例でご説明しましょう。たとえば100万円のボーナス原資があったとします。これを10人の従業員で分ける場合、かつての日本では10万円×10人とまでは言わないまでも、8万円から12万円くらいの範囲で評価を何段階かに分けて支給するというのが基本的な考えでした。 それが最近では、100万円の原資のうち80万円を上位2人が受け取り、残り20万円を8人で分けるという、こういったことが至極あたりまえになってきました。こうして一部の幹部候補となりうるスターの人材をつなぎ留め、併せてモチベーションアップにつなげ、華々しい活躍をしてもらうのです。 残念ながらローパフォーマンスと判断された従業員には自然退職を促すとともに、場合によってはAI時代のなかで従業員数の自然減を目論むような状況です。残酷なようですが、こういったサバイバルの時代に突入しています。したがって、賃金テーブルは議論の結果を待たずして「変化せざるを得ないもの」と心得ておくべきでしょう。 人事の分野には、進歩的であるよりも保守的な人物のほうが多いものです。すぐには変化を感じにくいかもしれませんが、これから5年程度で急速に先の例のような信賞必罰がはっきりした評価制度の運用がめずらしくなくなってくるでしょう。 みなさまもご自分のキャリアをどうするのか、現職の会社とこれからどう向き合っていくのかなど、一人ひとりの自覚が大切になってきている時期に入っているといえます。さて、準備はいかがでしょうか。 福留 拓人 東京エグゼクティブ・サーチ株式会社 代表取締役社長