健康食品「こんなに効く」というCMが信用できない納得事情
■グルコサミンなどに効果はある? ここからは、それぞれの化合物がなぜ効果がないかとする根拠について、関連する特性についてご説明しましょう。 まず、グルコサミンです。グルコサミンはよくテレビコマーシャルなどで宣伝しているのでご存じの人も多いと思います。変形性膝関節症に対する効果があるとして販売されています。しかし、グルコサミンは名前の通り、グルコースにアミン(アミノ基)が付いた構造です。 グルコサミンは消化管に入ると、消化酵素によりグルコースからアミノ基が外され、グルコースになります。グルコースはご存じの通り、砂糖やでんぷんなどが分解されて生成される単糖です。つまりグルコサミンを経口で摂取した場合、グルコースを摂取することと何ら変わりはないわけです。
このグルコサミンについて、臨床医師が50~60歳の6691人の女性を対象として行った無作為化比較試験の結果では、治療目的でのグルコサミンの内服は、摂取と発症に関し有意な影響は見られず、発症予防の効果は証明されませんでした。ただし、軽症者では有効とする報告もあるのですが、この試験は前述したシングルクローズドテストであって、その信用度は低いものです。 次にヒアルロン酸はどうでしょうか? ヒアルロン酸も変形性膝関節症に対する効果があるとして販売されています。高分子ヒアルロン酸を膝関節嚢内に直接注入すると効果があることが確認されています。
しかし、ヒアルロン酸は直鎖状の多糖化合物です。小腸は食物を栄養として吸収する器官ですが、糖であれば単糖もしくは糖が2つつながった二糖類以上の大きな糖鎖は吸収することができません。ですので、ヒアルロン酸も腸から吸収されることは理論的にありません。ヒアルロン酸も消化酵素であるアミラーゼにより分解されてしまい、その分解物はやはり単糖です。とてもそのような単糖に効果を期待することはできません。 ヒアルロン酸は糖がたくさんつながった高分子の多糖であって、潤滑作用があります。つまり関節内部に注射した場合は滑膜と骨の摩擦を減らして痛みを止める働きがあります。しかし、単糖になってしまっては、残念ながら潤滑作用はなくなってしまいます。もし、潤滑作用以外の効果があるとしても、経口投与されたとしたら変形性関節症に対しては効果があるとは思えません。