健康食品「こんなに効く」というCMが信用できない納得事情
■本当に効果があるなら医師が飛びついている それでは、これら健康食品は本当に変形性膝関節症に効果があるのでしょうか? はっきりいって、私はこれらの成分には効果がないと思っています。 どの成分に対してもいえることですが、まず、第一に整形外科医が、これら成分の効果を認めていないことです。医師によっては、薬でなくても効果があれば食品成分での効用を推奨する方もおられます。 この疾患は、次の図表に示すような対症療法的に用いられることがあります。しかし、残念ながらこれらの薬剤はあくまで疼痛緩和などの対症療法であって、治療や予防ができるものではありません。
この疾患の予防は前述したように、生活環境の改善しかなく、治療には人工関節などの外科的治療法しか認知されていません。医師としても、もし効果的な食品成分による治療法、予防法があるとしたら飛びつかないはずはありません。実際のところ、欧米はじめ国内でもこれら食品成分の有効性を検証する臨床試験が実施されましたが、いずれも効果は認められませんでした。 例外的に、これら成分を開発した企業が関与して実施された臨床試験で、軽度疾患を抑制する結果が得られていますが、それらの試験はいわゆるシングルクローズドテストです。シングルクローズドテストとは、ダブルブラインドテストの対比を示す臨床試験のことです。ダブルブラインドテストは、試験を受ける被験者も試験を実施する医師も被験者に投与されたサンプルが、目的とする成分を含む被試験物なのか、プラセボとよばれる偽薬なのか開示せずに試験が行われる種類の臨床試験のことです。
一方、シングルクローズドテストでは、目的とする成分を含む被試験物のみを試験する、対照物のない試験です。どんな人でも、「これは効果があります」といわれてからその物質を食べて試験に臨めば、何となく効果が現れるものです。この効果をプラセボ効果といいます。 私が知る限り、変形性関節症に対して実施された臨床試験で、有効性を示したダブルブラインド試験はありません。もし、私の勉強不足でそのようなものがあったとしても、その試験の信頼性が高いとは思えません。なぜなら、まともに実施された信頼ある臨床試験とは異なる結果だからです。