【戦後80年は日本にとって悪夢となるのか?】足並みそろえる中国・ロシアによる“歴史戦”へどう備えるべきか
あきれる政府の対中政策
ロシアのウクライナ侵略からまもなく3年となる。本稿ではその間に深化した中露の連携を取り上げ、領土問題など想定される歴史戦を提示してきたが、こうした状況下で24年11月、石破茂首相と習主席が会談したのである。 日中間の懸案である(1)東シナ海における軍事圧力の強化、(2)日本人学校の児童を殺害した犯人の動機、(3)日本産水産物の輸入再開時期の明示、(4)スパイ容疑で拘留されている日本人ビジネスマンの解放――などについて習主席から言及がなかったにもかかわらず、「非常にかみ合った意見交換だった」と述べた石破首相の発言は耳を疑わざるを得ない。 ロシアと歴史認識をすり合わせ、サンフランシスコ講和条約体制を拒否する中国は、対日姿勢を一時的に改善する動きがあったとしても、米欧とともに今の国際秩序を維持しようとする日本とは、対立の道を選択したと考えざるを得ない。
日本にだけ中国への入国ビザ(査証)の免除が遅れたのはその証左だろう。中国が日本に嫌がらせをしていただけだが、政府は返礼のように、訪日する中国人富裕層が10年間何度も利用できるビザを新設するなど中国に媚びる政策を打ち出してしまった。歴史戦を想定していれば、中国が沖縄など日本国内に親中勢力の拡大を目的とした浸透工作や認知戦を繰り広げるであろうことを考えつかなかったのだろうか。
産官学で歴史研究機関を設立せよ
竹島問題にはじまり、歴史教科書問題、慰安婦問題、徴用工問題、そして新たに尖閣諸島問題や沖縄問題が加わる歴史戦。関東大震災時の朝鮮人虐殺についても23年8月、当時の松野博一官房長官が「政府として調査した限り、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べている。だがそれは、敗戦直前に機密を含む重要書類を焼却してしまった裏返しでもあるだろう。 中国が「琉球研究センター」を設立するように、政府は早急に産官学が協力する戦略的かつ中立的な歴史研究機関を設立し、戦前、戦中、戦後の歴史と関係法について継続して調査研究し、分析した内容を公表する必要がある。現在は歴史に関心のある研究者が、個人の立場で研究しているだけであり、この状態が続けば、日本は虚偽や捏造の歴史であっても、苦杯を舐め続けることになる。
勝股秀通