【戦後80年は日本にとって悪夢となるのか?】足並みそろえる中国・ロシアによる“歴史戦”へどう備えるべきか
軍事的な連携も顕著で、24年8月に中国軍機が日本領空を初侵犯したのに続き、翌9月にはロシア軍機が北海道・礼文島の領空を侵犯し、12月にはロシア海軍のキロ級潜水艦が、沖縄・与那国島と西表島の間の接続水域内を航行していることが確認されている。 防衛省幹部によると「潜水艦は欧州方面からの帰路で、通常は北極海を経由して帰投するが、今回はわざわざ南シナ海で訓練し、日本海を経由して帰投している。中国の意向に沿って事前に中国と示し合わせた行動と考えるのが自然だ」と指摘する。
尖閣問題でロシアが中国支持を打ち出す可能性
お見事と言ってしまいそうな連携ぶりだが、孤立するロシアに手を差し伸べ続ける中国への感謝の印として、対日戦勝記念日の変更に続き、ロシアが日本に対する歴史戦として仕掛ける恐れがある事態は、日中間の沖縄・尖閣諸島を巡る問題で、プーチン大統領が中国の主張に沿って、中国の領有権を支持することだ。 これまでロシアは、日本との経済協力などもあって、尖閣諸島問題では中立な姿勢を保ってきた。ところが、非友好国とした日本に対しては22年7月、中国海軍とロシア海軍のフリゲート艦が並走するように尖閣諸島の接続水域を航行し、23年3月の中露首脳会談で「両国の核心的利益や領土保全を相互に支持する」との共同声明が発表されている。 まさに尖閣諸島と北方領土を念頭に置いた内容であり、報道によれば、首脳会談で習主席は、北方領土の領有権について「どちらか一方の立場を取らない」と表明したという。中国はこれまで、1964年に当時の毛沢東主席が訪中した日本の議員団に対し、北方領土については「皆さんに返還すべき」と述べ、日本領との認識を明確にしてきただけに、習主席が大きく転換し、ロシアに尖閣支持への誘い水を送ったと言っていいだろう。
中露が連携するもう一つの意図
中露が領土問題で連携する目的は、米国を中心に戦後の国際秩序を構築したサンフランシスコ講和条約体制への疑義を明確にし、体制の変更を目指すことにある。 23年6月、中国共産党機関紙「人民日報」は、沖縄・尖閣諸島に関連して習主席が「福建省の福州市には琉球館と琉球墓があり、交流の根源は深い」と発言したことを取り上げ、中国と沖縄(琉球)との関係に言及したことが報じられた。その翌7月には、人民日報系の雑誌が「現在の琉球は日本の実効支配下にあるが、歴史上、琉球の主権が日本に属すると定めた国際条約はない」と指摘している。 日本国内では「台湾有事は日本有事」などとして、日本が台湾問題に介入することへのけん制――といった見方もあるが、認識が甘すぎると言わざるを得ない。