対イスラム国「有志連合」 なぜポーランドやデンマークが参加? /高橋和夫・放送大学教授
イスラム国に対する一致した対応を求めるアメリカの呼びかけに世界各国が答えました。この「有志連合」には、 ヨルダンやサウジアラビアなどのアラブの5か国が爆撃に参加したのを始め、50か国以上がアメリカに協力する姿勢です。 【地図】イラクとシリアにまたがる「イスラム国」活動領域 注目されるのは、ポーランドのような東欧諸国さらにはデンマークのような北欧諸国が参加している事実です。ポーランドは大型輸送機を使ったイラクへの人道援助を始めました。特殊部隊の派遣も議論しているようです。デンマークはF16戦闘爆撃機を7機とパイロットなどの要員140名をクウェートの空軍基地に送り、イラクでの対イスラム国の爆撃に参加します。
■ポーランドの事情
何が理由で、こうしたイラクやシリアと関係の薄そうな国々が有志として立ち上がったのでしょうか。もちろん大義は、国際正義の実現に寄与することです。しかし、真の理由は別にありそうです。ポーランドの場合は、アメリカに忠誠を示す必要を強く感じているからでしょう。というのはロシアの脅威を切実に感じており、アメリカのポーランドを防衛するという強い姿勢を求めているからです。ウクライナの紛争は、ポーランドにとっては他人事ではありません。 ポーランドはNATO北大西洋条約機構の加盟国です。この条約は、一国への侵略を全ての加盟国への侵略とみなし、その防衛のためにアメリカを含む他の加盟国の軍隊が戦うことを義務づけています。ということは、もしロシアがポーランドを侵略すれば、第三次世界大戦の危機を覚悟でアメリカがロシアに対抗するわけです。もっと具体的に言えば、ポーランドの防衛のためにアメリカ兵が血を流すのです。これだけの犠牲を求めている以上、できる面では徹底的にアメリカに協力するというのがポーランドの姿勢です。その親アメリカ外交は、ロシアに何度も侵略されたというポーランドの歴史的な体験を抜きには理解できません。
■デンマークの事情
それではデンマークは、なにゆえにイスラム国と戦おうとしているのでしょうか。もちろんNATOの一員としてアメリカに協力しようとの姿勢の現れです。それにデンマークには、思いのほか多くのイスラム教徒が生活しています。