【毎日書評】自分の意見を「正しく伝えたい」なら、「相手が知りたいこと」に変換してみる
自分の思いを、うまくことばにできないということは少なくありません。そこでご紹介したいのが、『言葉にする習慣 思いがまとまる・伝わる「言語化力」の身につけ方』(さわらぎ寛子 著、明日香出版社)。 コピーライターである著者が、「自分の思いを、自分のことばで伝えられるようになりたい。けれど、その方法がわからない」方に向けて書いたという書籍。注目すべきは、以下の主張です。 自分の思いではなく、なんとなくどこかから引っ張ってきたような言葉を、「こう書けばうまくまとまる」「こう書けば伝わる」というテンプレートに当てはめることはできます。 でも、自分の言葉ではない、借り物の言葉でいくらうまくまとめても、それで自分の想いが伝わることはありません。 「どう伝えるか」の前に、「自分の思いを知る」「自分の思いを言葉にする」の2段階が必要なのです。(「はじめに」より) ネットでどれだけ検索したとしても、「うまくまとめる方法」のようなものを身につけたとしても、「自分の思い」は見つからないはず。自分がなにを思い、なにを感じ、なにを伝えたいかは、自分自身がことばにするしかないのです。 そこで本書は、「いま、自分がなにを思っているか」「自分の意見はどうなのか」を伝えられる人になるために書かれているということ。 「その人なりのものの見方」があるか、「その人らしいことば選び」と結びついているか。その人らしいと思ってもらえることばには、この2点が備わっているものだと著者はいいます。したがって「自分なりのものの見方」をつくり、それを「この人らしいな」と相手が感じてくれるようなことばにしていく必要があるのです。 そんな考え方を軸とした本書のなかから、きょうは第2部「相手に伝える習慣」内の第1章「伝わる言葉を作る」に焦点を当ててみたいと思います。
概念ではなく、エピソード・行動を伝える
「話が浅い」と思われてしまう人は、概念だけで上滑りの会話をしていることが多いものだと著者は指摘しています。 たとえば後輩から「仕事でもっと成長したいんです」と相談された際、「成長なんて気にせず、“自分らしく”でいいんだよ」「成長するには、ビジョンを持つことだよ」など、ふわっとしていて抽象的な返答をしたとしたら、「なんかいいことを話していそうだけど、結局なにがいいたいのかわからない」と思われてしまうはず。 「仕事でもっと成長したい」と言われたら、「そう感じるのは、たとえばどういうとき?」とエピソードを聞いてみてください。 すると、「お客さまに提案をするときに、あまりうまく伝わっていない気がする」と、具体的なシーンが出てきます。これによって、「それなら、どうするか」と行動に対するアドバイスができます。(182~183ページより) 文章を書くときにもあてはまることですが、抽象的なことばでふんわり伝えるのではなく、「実際になにをするか」を伝えるべきだということ。「自分を好きになろう」「気持ちを整えよう」といった抽象的な概念だけだとしたら、ふわふわとしたポエムのようなもの。 それでは相手に伝わらないだけでなく、自分でもなにをしたいのかがつかめなくなってしまいます。そこで、「なにがどういう状態になったら、そうなったといえるのか」を言葉にしていくことが大切だというわけです。(182ページより)