「いい曲なのになぜか怖い…」歌詞や映像が強烈すぎた『みんなのうた』のトラウマ曲たち
■美しいメロディと幻想的な世界観に惹き付けられる『まっくら森の歌』
『まっくら森の歌』もまた、「怖い」という声が多くあがる王道の楽曲だ。初放送は1985年で、作詞・作曲・歌を谷山浩子さんが手掛けている。 映像で登場するのは、仲良しのネコとネズミ。森の中を散歩していた二匹は、突如闇に包み込まれまっくら森へと迷いこんでしまう。青を基調とした薄暗いまっくら森にはフクロウをはじめとする不思議な生物が動き回り、幻想的ながらもほんのりと恐怖が漂っている。そして、謎の男が現れ、彼が持つ箱に闇が吸い込まれて森に光が戻っていく。 大人の立場で見ると、怖いよりもむしろ綺麗に見える映像だが、子ども目線では不思議な生物と森全体の暗い色調は怖い印象を持ってしまうかもしれない。 さらにこの曲が怖いと言われるゆえんは、謎めいた歌詞にもある。あべこべな言葉の並びや謎かけのような言葉たちは、「どういう意味?」と見ているこちらをまっくら森に引きずり込むくらいのミステリアスさだ。迷いや葛藤を抱える心を表現しているのか、不思議な世界を表現しているのか……。いずれにせよ、これらが組み合わさることで不気味な雰囲気が増すのである。 さらに寂しさを感じさせる美しいメロディが幻想的で摩訶不思議な世界を彩っていた。そんな独創的な曲だからこそ、長い間人々の記憶に残るのだろう。
■食べ物を粗末にした子どものホラー体験『恐怖の昼休み』
続いては、2014年に解散したTHE BOOMの楽曲『恐怖の昼休み』を振り返る。この曲は、宮沢和史さんが『みんなのうた』のために書き下ろしたもので、1991年に放送された。 この曲の主人公は、嫌いな給食を何でも机に突っ込んで隠す小学生のかずや。ある日、かずやがぶどうパンをいつものように机の中に突っ込むと、机が恐ろしい形相に変化し「中がカビだらけで日曜は笑い者にされる」と襲いかかってきた。 大暴れするかずやの机につられて、周囲の机も手当たり次第に教科書やクラスメイトを食べ始め、教室は大パニックに。かずやは必死で謝るも、ついに食べられてしまう。万事休すと思われたその時、遠くから母の声がして……。 という食べ残しへの風刺の曲なのだが、古川タクさんによる素朴でコミカルなイラストが可愛らしく基本的におどろおどろしい雰囲気はない。だが、中盤からのサイケデリックなホラー描写とのギャップが激しく、当時、この曲を見て「怖い」という感想を抱いた子どもは多かったはず。給食を隠した経験がある子ほど、怖くなってしまうのではないだろうか。 その一方、曲調はスタイリッシュなジャズ風で非常にテンポがいい。インパクトの強いフレーズを繰り返すことで大人も子どももノリやすくなっており、歌いたくなる曲でもあった。