就職氷河期世代は50代をどう生きるか 社会に出る段階で辛酸をなめ、社会に出てからも世の中の変化に振り回された
就職氷河期への提言「まずは生きてみましょう」
社会に出る段階で辛酸をなめ、社会に出てからも世の中の変化に振り回された一方、就職氷河期はインターネットが普及し始めた時期でもあります。 就職氷河期は当時マスボリュームを占めていたネットユーザーであり、インターネットの先頭を走っていた人たちにとって、それは暗い時代の一筋の光でもありました。
熊代「インターネットが現れた時、鋭敏に反応したのが若かった頃の私たちでした。その波にうまく乗って事業に成功した人もいれば、石の裏のダンゴムシみたいにインターネットに身を寄せ合う、うまく社会適応できなかった日陰者もいた。 少なくない同世代の人にとって、インターネットは救いだったのではと思います」 後から「ロストジェネレーション」と言われ、社会から「ないものとされた世代」である就職氷河期世代ですが、「これからはそう悪くないのでは」と熊代さん。 熊代「今後、就職氷河期は日本のマスボリュームになります。アニメ『らんま1/2』がリメイクされるなど、マーケットの標的として当てにされていますし、政治も経済も、我々の世代から各界のリーダーがきっと出るでしょう。 この先はだいぶ状況が変わってくるはずです。今後の我々は決して無力な存在ではないのだと思います」 だからこそ「まずは生きてみましょう」と提言します。
熊代「私たちの世代がまず意識すべきは、サバイブです。その際、仕事だけでなく、家族や友人、趣味の集まりなど、人間関係を丁寧に養うことがとても大事だと思っています」 人間関係を大事にする。 全世代に共通する話のように思えますが、就職氷河期世代に向けて強調する理由をこう語ります。 熊代「私たちの世代から家族を持たない人が増えましたから、一人暮らしが上手な方も多いと思います。その分、現在の人間関係がこの先はより貴重になる人も少なくないのではないでしょうか。 また、40代の預金額は30代よりも平均値・中央値が低いという統計もあります。この先は自身の病気や身内の介護などによって、人とのつながりを疎かにしてしまいやすい状況も増えると予想できます。 だからこそ気を引き締めて、少ない手札を大切にしていきましょう」 不遇の時代を生きてきた就職氷河期世代。でも、「時代の曲がり角に出合ってしまったことは強みでもある」と熊代さん。 熊代「『なんだこのやろう』と歯を食いしばって生きてきた分、『もうこんな目には遭いたくない』とみんなが思っているはず。『割を食ったままでは終わらないぞ』というガッツは、どういう立場の方であれ、活かせるんじゃないでしょうか。 それぞれの持ち場で良き行動を積み重ねていければいいなと思います」
執筆:天野夏海 バナーイラスト:wenjin chen / gettyimages デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio) 編集:奈良岡崇子