就職氷河期世代は50代をどう生きるか 社会に出る段階で辛酸をなめ、社会に出てからも世の中の変化に振り回された
1993~2004年頃、バブル崩壊後の雇用状況が厳しかった時期に就職活動をした就職氷河期世代。現在の40代半ば~50代半ばが該当します。 そんな時代を生きた一人の精神科医の目線から、およそ半世紀を振り返った手記が『ないものとされた世代のわたしたち』。 「ないものとされた」就職氷河期世代は、50代以降のビジネス人生をどう生きればいいのでしょうか。著者である、熊代亨さんの見解を聞きました。
【熊代亨(TORU KUMASHIRO)】 精神科医 1975年生まれ、精神科医。信州大学医学部卒業。 ブログ「シロクマの屑籠」にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている。 著書に『「若作りうつ」社会』『「若者」をやめて、「大人」を始める』『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』『「推し」で心はみたされる?』『人間はどこまで家畜か』など。
我慢強い就職氷河期世代が、今後のためにすべき準備
熊代さんは1975年生まれの49歳。1997年、四年制大学に進学した同級生たちが就職活動に苦戦する姿を目の当たりにした、就職氷河期ど真ん中の世代です。 熊代「この世代は就職難に見舞われたことによって、運命が分かれていますよね。厳しい状況の中で自ら事業を立ち上げた人もいれば、就職したとはいえ家庭をもつ余裕もない人もいたりと、現在置かれている状況はさまざまです。 考え方や生活状況が人によって大きく違うのが、就職氷河期世代の特徴だと思います」 時代の波に翻弄されてきたからこそ、就職氷河期世代には我慢強い人も目立ちます。その背景には、「世の中に対してものを言ってこなかった過去がある」と熊代さん。
熊代「私たちはそれぞれが時代をサバイブしてきましたが、政治運動をしたり大きな声を上げたりはしなかったし、できなかったと思います。SNSもなく、声を拾い上げてはもらえなかったですから。 だから黙って社会の言いなりになり、上の世代からのしわ寄せを受け入れるしかなかった。そうした姿勢は、今日になっても我々の世代に残っているように思います」 加えて世の中の変化が早まったことにより、ビジネスシーンでは迅速な対応が求められるように。マルチタスクを余儀なくされる中、我慢強い就職氷河期世代は仕事を抱え込みやすくなっている面もありそうです。 熊代「アラフィフは体の曲がり角であり、更年期症状や血液検査値の異常など、病気の気配も見えてきます。子どもが巣立ったり、親の介護が視野に入ってきたりといった環境の変化に加えて、自分の定年退職を意識する時期でもある。 そう考えると、この先の人生を若かった頃と同じように生きるのは無理だと思うんです。これまでは肩ひじを張らなければ生きてこられなかった面もありましたが、これから先はもうちょっと力を抜いた生き方ができたらいいのでしょうね」 就職してから今に至るまでを振り返り、自己責任だと我慢強く生きてこざるを得なかったことを自覚する。それが50代以降のキャリアや人生について考えるにあたり、最初にすべきことなのかもしれません。