2025年「通信と金融」再編の鍵は銀行だ。ドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天それぞれの課題
【NTTドコモ】サービス拡大も決定打に欠ける
こうして各社の金融連携からスタートして2024年だったが、1月以降、ドコモは金融領域で新しい施策を打ち出している。 保険領域:イーデザイン損保と連携 約1年前の2024年1月30日にはイーデザイン損保と「ドコモの自動車保険」で協業。現状、ドコモは保険商品を紹介する形で、ドコモ・インシュアランスとともに「ドコモスマート保険ナビ」として保険事業を行っている。これはソフトバンクも同様のスタイルだ。 他社を見てみると保険分野では、KDDIはあいおいニッセイ同和損保と共同出資したau損害保険が、14年という長期にわたって事業を展開。楽天は2018年に朝日火災海上保険を買収して傘下に収め、「楽天損保」として事業に参入している。 少額ローン領域:オリックス・クレジットを子会社化 また、ドコモは3月6日にオリックス・クレジットとの資本業務提携を発表して子会社化。すでに提供している「dスマホローン」事業の強化などを図る。 これは少額のカードローンをスマートフォン単体で利用できるというものだ。 他社は、KDDIが「au PAYスマホローン」というサービスを展開している。ソフトバンクは、グループ内のLINEが提供する「LINEポケットマネー」があり、楽天は「楽天銀行カードローン」はあるものの、dスマホローンと同種のサービスではない。 ポイント特化の携帯料金プランとプラチナカード 同じ3月には「ドコモポイ活プラン」を発表。携帯の料金プランとポイントを連携させた。 当初はdポイント還元率を高める程度だったが、7月の「eximoポイ活」ではマネックス証券で「dカードGOLD」によるdカード積立することで還元率を高めた。 11月にはプラチナカードとして「dカード PLATINUM」を発表。カード事業で先行する楽天カードのプラチナカードも参考に、還元率などを高めて利用者の拡大を狙う。 銀行業:他社に比べて物足りない こうして金融サービスを拡大してきたドコモだが、懸案なのが最大の柱となる銀行業の不在だ。 銀行サービスとしては三菱UFJ銀行と協業した「dスマートバンク」は存在しているが、これはあくまで「dポイントと紐付く三菱UFJ銀行の口座」という程度だ。 銀行業をどうするのかは、長らく注目されており、同社の前田義晃社長も2024年度内の参入に意欲を示している。 NTTドコモが「住信SBIネット銀行」を買収する方針という報道もあるが、正式な発表ではない。 また、三菱UFJ銀行がこれまでKDDIとの合弁で運営していた「auじぶん銀行」を手放したことも注目だ。三菱UFJ銀行はdスマートバンクで協業してるだけに、BaaS(Bank as a Service)事業を全面的に取り入れる可能性もあるだろう。 ただ、銀行免許を取得するかどうかは大きな違いで、サービスの幅も拡大して、囲い込み戦略も加速できる。現時点で決定打に欠けるドコモの2025年の施策は注目だ。
小山安博