世界で900万台を売った「スズキ・スイフト」があえて「電動化」しなかったワケ
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温暖化対策にも貢献する
世界市場でも日本企業の存在感は増している。全世界で900万台を販売したスズキのコンパクトカー・スイフトは7年ぶりのフルモデルチェンジに踏み切った。同社の四輪商品第二部チーフエンジニアの小堀昌雄氏がその舞台裏を明かす。 「今回のスイフトは4代目(日本では5代目)になりますが、企画が始まったのは、'19年のこと。あの頃はこれからどんどん電動化が進み、今後はEV(電気自動車)が当たり前になるといった雰囲気でした。しかし、電動化しようとすると、価格面とインフラなどの使い勝手の難しさがあった。欧州のお客様にとって、スイフトは『ゲタ代わり』の商品で、通勤や買い物、子どもの送迎に使うような車です。電動化して、高い値段にするような商品ではないと思っていました」 そこで小堀氏らは、日本はもとより、欧州にも足を運び、購入者となるような人たちの意見を聞いて回った。 「お客様に尋ねても、答えはありません。お客様の感じていることや期待することを探って、自分たちなりの解答を導くのです。日本のお客様は電動化に対して強い関心を持っていないことがわかりました。むしろ、先進的な安全技術を搭載してほしいという声がすごく多かったですね。
日本と欧州のニーズの違い
一方で、当時の欧州のお客様が重視していたのは、環境性能であり、電動化です。今回のようなガソリンエンジンを新しく作って搭載するということには否定的ではありました」 小堀氏が言うように、顧客が正解を持っているわけではない。欧州の顧客の言うように電動化を進めたら、結局は高価になって見向きもされないかもしれない。 「情報を整理した結果、今回はガソリンエンジンを使ったモデルチェンジをすることに決定しました。欧州のお客様が求めているのは環境性能です。ガソリンエンジンでも燃費を上げたり、空気抵抗や重量を減らせるようボディを工夫したりすることで、期待に応えることにしたのです」 そうして昨年末に発表された新型スイフトは、日欧ともに好評を博しているという。 【ものづくり・ニッポンの復活】(6)『北米市場トップ獲りへ…「エアコン」で環境問題に挑む日本トップ企業の名前』ヘ続く 「週刊現代」2024年5月18・25日合併号より
週刊現代(講談社)