トンネル内のスイッチバックや地下トロッコ……2024年初夏、新しい観光ルートが誕生
黒部宇奈月キャニオンルート(富山県・黒部市、立山町)
2024年初夏、新しい観光ルートが誕生する。黒部峡谷鉄道の終点・欅平(けやきだいら)と黒部ダムを結ぶ「黒部宇奈月キャニオンルート」だ。関係者以外立ち入れなかったルートでは、特殊な乗り物が楽しめ、知られざる絶景が待っている。 黒部宇奈月キャニオンルートの詳しい地図はこちら このルートは約60年前に黒部川第三・第四発電所建設のために整備され、現在は関西電力が管理している。これまで工事関係者以外は立ち入ることができなかったが、24年6月からの一般開放・旅行商品化が決定。旅行会社のツアー参加(事前予約)で行けるようになる。 キャニオンルートを構成する乗り物は、工事用トロッコ電車、竪坑(たてこう)エレベーター、上部専用軌道、インクライン、黒部トンネル内バスの五つ。これらを乗り継いで、欅平―黒部ダム間の約18キロを走破する。
欅平から最初に乗る工事用トロッコ電車は、黒部峡谷鉄道の工事用路線で、約500メートル延びている。トンネル内にスイッチバックがあり、折り返して終点に着く。これだけでも鉄道ファンにはたまらないだろう。 次に乗るのは竪坑エレベーター。エレベーターが設置されたのは、付近の河川勾配が急すぎて、川沿いに鉄道を延ばせなかったから。200メートルを約2分で一気に上る。 続いて上部専用軌道に乗り換える。いわゆる「地下トロッコ」で、キャニオンルートのハイライトだ。途中の「高熱隧道」と呼ばれる区間は、岩盤温度が高く工事が難航したことで有名。現在も温度が高く、トロッコは耐熱仕様となっている。窓外の風景は岩肌が続くが、車内の室温は上がり、窓は曇り、硫黄の匂いが漂ってくる。 上部専用軌道は約6.5キロもある。そのほとんどはトンネルだが、仙人谷には鉄橋があり、橋上からダムや滝の絶景を眺められる。終点の黒部川第四発電所前でインクライン(ケーブルカー)に乗り継ぎ、高低差456メートルを上る。無骨な外観で動きはゆっくり。距離はわずか815メートルだが、上りきるまで20分もかかる。 インクラインを降りるとラストスパート。長さ10.2キロの黒部トンネルをバスで走り抜ける。途中、タル沢横坑(おうこう)にある展望台では「裏剱(うらつるぎ)」を望める。登山上級者でなければ見られなかった絶景だ。雪渓を従えてそそり立つ剱岳の姿が神々しい。 トンネル内の終点でバスを降り、外に出ると、豪壮な黒部ダムが目の前に。太陽の光がことのほかまぶしい。多彩な乗り物を乗り継いで地底深く突き進み、渓谷の絶景を垣間見ながら黒部ダムに到着するダイナミックなキャニオンルート。国内外の観光客に人気を博すのは間違いない。 文/鎌倉 淳 ※「旅行読売」2024年2月号の特集「2024年に見たい 新 日本の絶景」より