MCTオイルって何？あまり知られていない健康効果とは
医療現場やスポーツでも取り入れられたMCTオイル
脂肪肝の治療法としては、食事指導と運動療法が中心になりますが、齋藤さんがお勧めするのは、「MCTオイル」をふだんの食生活に取り入れること。MCTオイルは、ココナツやパームなどヤシ科の植物に含まれる「中鎖脂肪酸（MCT）」100%の食用油で、脂肪を燃焼させる働きがあるとされています。 「MCTオイルは1980年代ごろから、医療現場では術後の患者の栄養補給に利用されてきたオイルです。母乳にも含まれていて、消化・吸収が早く、素早くエネルギーに変換されることが知られており、スポーツの現場でも取り入れられています。また、エネルギーを燃やす“着火剤”としても利用され、糖質制限中に満腹感が得られる効果もあります」 齋藤さんによると、MCTオイルが脂肪を燃焼させるメカニズムは、次の通りです。 人間の体は、エネルギー源となる糖質が不足すると、体内に蓄えた脂肪をもとに肝臓で「ケトン体」と呼ばれる物質が生成され、このケトン体が各細胞のエネルギー源として利用される仕組みになっています。体内でエネルギー源として優先的に使われるのはブドウ糖ですが、MCTオイルは摂取後に肝臓まで直接運ばれ、脂肪を材料にしてケトン体を効率的に作り出すことがわかってきたのです。「厳しい糖質制限を続けようとすると大変に感じる人でも、MCTオイルはダイレクトに肝臓に作用を及ぼすので、お勧めです」と齋藤さん。 MCTオイルの使い方は、ふだんの食事に小さじ2分の1程度をかけるだけ。無味無臭なので、どんな料理にも合います。ただし、ほかの食用油に比べ発煙点が低い油なので、温かい料理にかけるのは大丈夫ですが、炒めものなど加熱調理に直接使うのは避けたほうがいいそうです。 「野菜や豆類など繊維質たっぷりの料理にして、最初に野菜をよくかんで食べること。そして、食事全体の量を取り過ぎないように。暴飲暴食をしていたら、MCTオイルを使っても効果は望み薄です。最近は、ヨーグルトなどの市販品にもMCTオイルを添加したものが増えているので、こうした食品を賢く利用するのもいいと思います。ただし、空腹時に摂取すると、胃腸が刺激され、不快感を覚えてしまうことも。また、いくら体に良いからと言って冷たいスムージーなどに入れて飲むと、おなかを下してしまうこともあるので避けましょう」 食事で糖質を摂取すると血糖値が上昇し、血糖値を下げるためにインスリンと呼ばれるホルモンが分泌されます。インスリンは、血中の糖分を脂肪に替えて体内にため込んでしまう働きがあるため、脂肪肝を改善するには、血糖値の上昇を抑える必要があります。一方、血糖値が下がり過ぎても、動悸や頭痛、昏睡などの症状が表れることがあるため、血糖値を安定させることも重要です。 血糖値を安定させるには、（1）ご飯やパン、麺類などに多く含まれる糖質の摂取量を減らす（2）バナナやサラダチキンなど満腹感を覚えやすい食材を取る（3）昼食を正午に取ったら午後3時～4時に間食を取るなどして空腹になりすぎないようにするなども大切です。 （読売新聞メディア局 永原香代子）
