「多様性の象徴」ハリス氏の戦略と課題は フクヤマ氏に聞く
11月5日の米大統領選は、民主党のハリス副大統領（60）と共和党のトランプ前大統領（78）の大接戦が見込まれる。バイデン大統領（81）の選挙戦からの撤退を受け、急きょ後継候補となったハリス氏は、民主党が重視する「多様性」の象徴とされてきた。ハリス氏の戦略と課題をどうみるか、米スタンフォード大の政治学者、フランシス・フクヤマ氏に聞いた。 【写真】多様性の象徴、ハリスの戦略は 「アイデンティティー政治」の渦中で インド系の母とジャマイカ系の父を持つハリス氏が当選すれば、女性、また黒人女性、アジア系としても初の米大統領となる。だがフクヤマ氏は、大統領選でのハリス氏について「注意深く、自分が黒人や女性であることを強調しないようにしてきた」とみる。 なぜか。黒人、アジア系の女性であるハリス氏が2020年の大統領選に向け、バイデン氏から副大統領候補に選ばれたのは、人種やジェンダーなどの属性を重視する「アイデンティティー政治」によるものだとの見方がある。だが保守的な米有権者の間では、民主党の「アイデンティティー重視」への反発は根強い。こうした状況を踏まえ、フクヤマ氏は「ハリス氏はアイデンティティー政治を軽視しようとしてきた」と指摘する。 ハリス氏は、移民問題などをめぐり、かつての左派寄りの政策を封印し、中道寄りの政策にシフトしてきた。「変節」を批判する声もあるが、フクヤマ氏は、民主党が大統領選に勝利するには「中道的な立場を取るしかない」とみる。 大統領選の結果のカギを握る激戦州については「どちらに転ぶかわからない」と指摘。ハリス氏が勝利するには、激戦州での集会をさらに頻繁に開き、「経済問題や治安などにおける自身の立場を伝え、人々を安心させる必要がある」との見方を示した。（ワシントン＝清宮涼）
朝日新聞社
