【緊急検証】難敵ヒズボラを"半壊"させ勢いに乗るイスラエル。しかし対イラン攻撃がエスカレートすれば、その結末は......イスラエルvsイラン「最悪の暴発シナリオ」
子飼いのヒズボラを叩かれたイランの"抑制された報復"に対し、イスラエルの「次の一手」が注目される中、半月以上も続いた不気味な沈黙。その先にあるのが理性的な選択ならばいいが、事態はそれほど楽観視できる状況ではなさそうだ。 【写真】ウラン濃縮のための遠心分離機があるナタンズの核施設 * * * ■イスラエル世論に加え米共和党も強硬路線 10月1日、イランから発射された180発以上の弾道ミサイルが、夜7時30分のイスラエルに降り注いだ。 イラン革命防衛隊のフセイン・サラミ司令官は、ガザ地区のイスラム組織ハマスの政治部門トップだったイスマイル・ハニヤ(7月にイランで殺害)、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ハサン・ナスララ、革命防衛隊の対外工作部門の司令官アッバス・ニルフォルーシャン(共に9月にレバノンで殺害)の死に対する報復であると明言。 その大部分はイスラエルの防空システムや米海軍艦によって迎撃されたが、数十発がイスラエル軍基地の周辺などに着弾したとみられている。 この攻撃を受け、世界の注目はイスラエルの「次の一手」に集まった。イランに対しなんらかの反撃を行なうことは間違いないが、その内容によっては、両国が本格的な戦争状態に突入しかねないからだ。 想定される反撃の選択肢は、烈度が高い――つまり、イラン側の激しい反応が懸念される順に並べると以下のとおり。 ①核開発関連施設への攻撃。②石油関連施設への攻撃。③ミサイル攻撃の拠点や革命防衛隊の拠点など、核施設以外の軍事関連施設への攻撃。 ただし、攻撃を受けてから半月がたっても、イスラエルは反撃を実行していない(10月16日時点)。4月にイランからドローン・ミサイル攻撃を受けた際は1週間以内に反撃(イランの防空レーダーを破壊)したにもかかわらず、今回はなぜこれほど時間を要しているのか? アメリカとその同盟国の外交・安全保障に詳しい明海大学教授・日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男氏はこう語る。 「一番大きな理由は、アメリカとの調整が難航していることだと思います。これ以上のエスカレーションを抑えるために、米バイデン政権は核施設以外の軍事関連施設への攻撃にとどめることを望んでいますが、一方でイスラエル国内、そして米国内でも共和党側からは、イランの核施設を叩くべきだという声が出ているのが現状です」 もしイランから再び反撃があった場合、イスラエルは米軍の防空能力や、アメリカからの防空ミサイル提供に頼るしかなく、米政府との調整もなしに攻撃に出るわけにはいかない。しかし、10月15日にはイスラエル首相府が「イスラエルの国益に基づいて最終決定を下す」と発表。予断を許さない状況が続いている。