群馬・前橋が「いま熱い」のはなぜ? レトロな街がアートと建築で進化
連載《とっておきの旅》
群馬県の県庁があるのは上越・北陸新幹線の停車駅「高崎」ではない。高崎からJR両毛線で4駅目の「前橋」だ。前橋はかつて日本初のイタリア式製糸場があり、立派なレンガ造りの製糸場や倉庫が建つ絹の街として知られていた。そんな歴史の街がいま、アートと建築で他にはないユニークな進化を遂げつつある。世界的なアーティストも引きつけられるという必見の前橋のスポットを紹介しながらその魅力に迫る。 【写真はこちら】白井屋ホテル、まえばしガレリアなど…アートな雰囲気をもっと見る
■世界的クリエーターが客室を造る「白井屋ホテル」
JR両毛線で前橋駅に降り立つと「詩人・萩原朔太郎の故郷」という案内板がある。萩原朔太郎記念館もあるこの街の新しい顔は、駅から徒歩約15分(車で約5分)のところにある。300年の歴史があった旅館「白井屋」の名前と建物を引き継ぎ、建築家の藤本壮介と多数のアーティストたちによって生まれ変わった「白井屋ホテル(SHIROIYA HOTEL)」だ。 コンセプチュアルアート(概念芸術)の旗手であるローレンス・ウィナー氏の作品がファサード(建物正面部の外観)を飾り、エントランスを入ると現代美術作家の杉本博司氏の作品がゲストを迎える。打ちっ放しの旧ホテルの吹き抜けの躯体(くたい)を走るのは、夜には色が変化していくレアンドロ・エルリッヒ氏の「ライティング・パイプ」だ。新築のグリーンタワーを加えた館内外を多くのアーティストの作品で飾り、世界的なレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」に掲載されたイノベーティブなレストランやバー、パティスリー、サウナも備える。 客室25室は全て異なる作品が楽しめ、うち4室は世界的なクリエーターが手がけるスペシャルルームだ。前橋にこれだけの建築とアートが集まっているのはここだけではない。歴史ある街で昭和のレトロ感が残る前橋には、現代美術のミュージアムやギャラリーを中心とする複合施設、気鋭の建築家たちが手がけた飲食店などが集結している。 そこには、白井屋ホテルを手がけた田中仁氏(眼鏡専門店「JINS」を運営するジンズホールディングス最高経営責任者)をはじめとする前橋の人たちの「街なかに文化芸術を」という熱い思いがある。