群馬・前橋が「いま熱い」のはなぜ? レトロな街がアートと建築で進化
■ギャラリーに住居やレストランも同居
白井屋ホテルから歩いて5分ほど。昔ながらの雰囲気を残す「前橋中心商店街」に2023年5月に開業した複合施設が「まえばしガレリア」だ。1階はガラス張りで明るく、高低差を設けて緑を配した真っ白な建物は大きな樹木のようにも見える。設計は京都大学教授でもある建築家の平田晃久氏。 5つの有名なアートギャラリー、26世帯の分譲マンション、そしてハイエンドなフレンチレストランが入っている。展覧会期間の44日間で1950人が訪れたという。手がけたのは、前橋のために設立され、多くのプロジェクトに関わるデベロッパー、まちの開発舎だ。前橋出身の代表取締役、橋本薫氏になぜ前橋にこうしたアートと建築の集約が可能なのかを聞いた。 「前橋の街中には文化や芸術の拠点が必要だという市民の思いから、2013年に西武デパートの跡地にミュージアム『アーツ前橋』が誕生。2015年には市と民間の共創による魅力的な街づくりを進めるために、ドイツのコンサルティング会社に街づくりのビジョン策定を依頼。『Where good things grow.』というコンンセプトを受け、前橋出身の糸井重里氏が『めぶく。』と日本語解釈し、2016年に『前橋ビジョン』として発表された」 「かつて前橋に県庁を誘致した『前橋二十五人衆』を彷彿(ほうふつ)とさせる24社の地元有志による『太陽の会』が結成され、民間主導でさまざまな官民連携を推進してきている。常識にとらわれないこれらの活動の根底にはデザイン思考があり、建築は街の関係人口の創出に寄与している。表現という観点で市民活動を捉えることでアートとの親和性が高まった」 市民や前橋に関わりのある人たちがしがらみや立場を越え、積極的に街づくりに取り組んできた結果だと橋本氏は語る。 まえばしガレリアの1階では、写真を中心に国内外のアーティストの作品を扱うタカ・イシイギャラリーと、小山登美夫ギャラリー・MAKI Gallery・rin art association・Art Office Shiobaraによる共同運営のギャラリーがコンテンポラリーな作品を扱う。ここは東京の六本木や表参道にも出店するギャラリーも入るアートスポットなのだ。2~4階の住居は採光のいい部屋とテラスもあり、ほとんど完売。いくつかの住戸は民泊として運営しているという。