高校サッカー23年ぶり“4強”静岡学園の快進撃裏に鹿島入団内定エース松村優太の存在感
相手にサイドの守備を固められようが関係ない。自慢のドリブルで一人目の刺客を抜き去り、二人目が慌てて間合いを詰めてきた刹那で、静岡学園(静岡)の「10番」が大仕事を演じてみせた。 駒沢陸上競技場で徳島市立(徳島)と対峙した、5日の全国高校サッカー選手権大会準々決勝。セットプレーから2点のリードを奪って迎えた前半40分に、大会終了後に鹿島アントラーズへの加入を内定させている右サイドアタッカー、松村優太(3年)がまばゆい輝きを放った。 「いい形で前を向けたので、最初はシュートにもっていこうと考えたんですけど。ドリブルを始めたときに、相手がけっこう中を切ってきたと感じたのでまず縦へ行って、ちょっと浮かせたボールを出せればと。昨日の段階からクロスへの入り方を話し合っていたので、その通りになってよかったです」 松村は理路整然とした口調で、FW岩本悠輝(3年)のヘディング弾をアシストした場面を振り返った。しかし、右サイドから正確無比なクロスを放つまでの過程は決して簡単なものではなかった。 中盤におけるボールの奪い合いから、静岡学園のMF浅倉廉(3年)が前へ抜け出す。このとき、右前方にいた松村の前には大きなスペースが広がっていた。待ってましたとばかりにパスを受けた高速ドリブラーは、マークについた左シャドーの野口蓮太(3年)を縦への加速で置き去りにする。 しかし、野口をフォローしていた徳島市立のキャプテン、ボランチの阿部夏己(3年)が必死に食い下がってくる。それでも誰にマークされようと関係ないとばかりに縦への突進を続けた松村は、スピードを落とすことなく、さらに阿部を抜き去る前にほぼ直角の方向へ山なりのクロスを供給した。 「徳島市立は守りを固めてくるというデータがあったので、自分たちがどれだけ積極的に仕掛けて、相手の守備を崩せるかにかかってくると考えていた。前半のうちに3点目を、それも最後になって取れて相手もガクッときていたので、あの時間帯にゴールを奪えたのは大きかったと思う」