高校サッカー23年ぶり“4強”静岡学園の快進撃裏に鹿島入団内定エース松村優太の存在感
松村をはじめとする3年生にとって、最初で最後となる全国高校選手権。選手たちの間では「平均で3ゴール以上奪って、無失点で優勝する」という誓いが立てられた。最終的に徳島市立を4-0で撃破した静岡学園は、準々決勝までの4試合で15ゴール、無失点と目標をクリアしている。 6-0で快勝した岡山学芸館(岡山)との1回戦では、ボランチの井堀二昭(3年)がハットトリックを達成。負傷している加納大(2年)に代わってワントップに入った岩本も徳島市立戦でハットトリックを達成し、今大会におけるゴール数を5に伸ばして得点ランクのトップタイに浮上した。 もっとも、先発する攻撃陣のなかでただ一人、松村だけが無得点となっている。徳島市立戦の後半20分すぎからは左サイドに回ったが、これは川口修監督による配慮でもあった。右利きのドリブラーが左サイドから仕掛ければ、カットインから右足でシュートを打つ機会が増えるからだ。 「彼も焦ってはいないと思うんですけど、それでも左サイドでちょっと雰囲気と角度、目線を変えてゴールを取れるかなと思ったんですけどね」 試合後の取材エリアで川口監督も思わず苦笑いを浮かべたが、松村自身は泰然自若としている。大勝発進した1回戦で自分も続こうとばかりに焦って中央へ寄ってしまい、攻撃のリズムを狂わせた苦い思いが「いま最も意識しているのが、相手のマークを自分に引きつけることです」と言わしめる。 「1試合目で吹っ切れました。自分へのマークが厳しい、というのはわかっているので、僕がサイドに張ることによってみんなが点を取ってくれているので」 もちろん、アタッカーの一人である以上は、誰でもゴールはほしい。松村も例外ではないが、県大会の準決勝および決勝でゴールを決めたように、より注目される大一番に取っておくと無邪気に笑う。 「けっこう周りからも言われるんですよ。テレビに映っていたら強いね、と」 埼玉スタジアムを舞台に、11日に行われる矢板中央(栃木)との準決勝は、日本テレビ系列の地上波で生中継される。5度目の出場だった1996年度大会以来、23年ぶりにベスト4へ進んだ静岡学園が、いま現在は黒子に徹しているエースのエンジン全開宣言とともに頂点へ向けて頂点へ加速していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)