岐路に立つサムスン…「TSMCの模倣」超えファウンドリーで新たに戦略立て直さなくては
サムスン電子のファウンドリー(半導体委託生産)が岐路に立った。会社が「メモリー競争力回復」に優先順位を置き、ファウンドリー投資を縮小して人材配置を調整している。 すると韓国の半導体装備会社とデザインハウスでは「業界最大手が厳しいので業界はみんな厳しい」というため息が出ている。システム(非メモリー)半導体はファウンドリーを中心にファブレス(設計)、デザインハウス、装備企業、後工程などが緊密に関わるが、ファウンドリーが萎縮すれば連鎖的に仕事が途切れる。 サムスンファウンドリーが立つ場所はすなわち韓国電子産業の岐路だ。「同じものを安く作る」量産競争力から、「顧客と市場を読み取る」企画・サービス競争力への転換点を迎えたためだ。 サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は先月、ファウンドリーに対し「事業を育てようとする熱望は大きい。分社に関心はない」と話した。オーナーの意志が確認されただけに短期的成果を超えこれを一貫して実現するリーダーシップが切実だという指摘が出る。「いまサムスンに必要なものはただ1人の先覚者」であり、「そうでなければ危険を遠ざけようとする官僚主義企業にすぎない」と、『サムスン・ライジング』の著者ジェフリー・ケイン氏は最近中央日報とのメールインタビューで話した。 ◇「TSMCの模倣」ではなく「サムスンの戦略」が必要だ 元サムスン役員らと半導体業界関係者は、「TSMCの模倣」ではなくサムスンだけのファウンドリー戦略を立てなければならないと助言する。ソウル大学のキム・ヒョンジュン名誉教授は「サムスンは2030年にTSMCに追いつくとして性急だった」と指摘した。例えば3ナノメートル(ナノは10億分の1)GAA工法を世界で初めて導入したが、「初めての開発」のスローガンに埋没し、その後落ち着いて我慢強く歩留まりを高めて行くことができなかったということだ。 政府が49%の株式を保有し適任者を招聘してTSMCを始めた台湾と、50年前に民間企業家の決断で始めた韓国の半導体は生まれからして違う。TSMCは1992年の民営化後も政府と特殊な関係にある。台湾国家発展委員会(NDC)の委員長はTSMC理事会の一員であり、台湾にはTSMC最先端工程を自国内に置かなければならないという技術保護規定もある。 しかし複数の元サムスン役員によると、この4~5年間にサムスンファウンドリーはTSMCが検証した成功の方式を追うケースが多かった。例えばサムスンファウンドリーはアップルやテスラなどの注文型半導体(ASIC)を設計・製造できる能力を育てたが、これをファウンドリー事業部でやるべきなのかとの内部論争の末に「TSMCはASICをしていない」という理由でこれをシステムLSI事業部に移管したという。当時サムスンのASIC競合会社だったブロードコムはその後相次ぐ大型買収合併を経て圧倒的なASIC市場1位になり、グーグルとオープンAIが注文したチップ生産を担っている。 ◇インテル「パッケージング」戦略、サムスンの未来への備えは インテルはファウンドリー赤字が深刻だが、「先端パッケージング強化」の戦略をあきらめていない。先月ソウルで開かれた電子工学会のワークショップでインテルのイ・チュンフン首席副社長は共同パッケージ型光学(CPO)とガラス基盤などインテルが開発するパッケージング技術を紹介しながら「TSMCで作りインテルでパッケージングしにくる顧客が増加している」と話した。 成均館(ソンギュングァン)大学化学工学部のクォン・ソクチュン教授は「メモリー半導体もこれからは汎用よりはAI用、ハイブリッド、コア・メモリー統合など多様化する可能性が大きい。サムスンが既存のメモリー事業戦略を固守するのは有利でない」と話した。続けて「システムあるいはメモリーのひとつだけ見る単線戦略ではなく、新しいメモリー半導体需要を反映した戦略的変身で市場を創出しなければならない」と助言した。 韓国産業研究院のキョン・ヒグォン副研究委員は「厳しい時ほど未来に備えなければならない。サムスンファウンドリーも現在の状況が厳しくてもエクシノスAPやCMOSイメージセンサーのような核心ラインを戦略的に残さなければならない」と話した。カオンチップスのチョン・ギュドン代表は「2年前に問題となったサムスンの5ナノの歩留まりもまだ解決していない。サムスン内外ともに粘り強さと忍耐が必要だ」と話した。サムスンファウンドリーの4ナノ顧客である米AI半導体企業グロックのジョナサン・ロスCEOは中央日報に「韓国で生産されたチップがすでに市場に出ており、テキサス州テイラーのサムスン工場完工後に注文量を増やすだろう」と話した。 結局当面の業績成果より長期的な戦略を立てる「技術経営」が重要だという話だ。ジェフリー・ケイン氏は「ソニーが没落したのは創業者の盛田昭夫氏の死後に『キッチンにとても多くの料理人』がいたため。いまサムスンは進むべき道を案内する1人の預言者、スター(経営者)が必要だ」と話した。