「正月とお盆しか親に会わない」子どもが見落とす高齢親の重大リスク
HTさん「私は母に『弟もたまには親の様子を見に来なきゃいけない、弟にも手伝ってもらえ』と言うんです。でも、母が『来てもらわんでもいい、大変だから』と言うんです。私には遠慮なくあれこれ言うのに、弟には気を遣う。弟が来ても役に立たないと思っている。『食べることも心配、掃除もせんといけん』と。弟はお客さんなんです。『(弟に)帰らないでいいと断ってくれ』といつも私に言ってきます」 ● 「働いている息子に 迷惑をかけてはいけない」 いまの高齢世代には、「親は子ども(特に“働いている息子”)に迷惑をかけてはいけない」「子どもの生活を乱してはいけない」と考える人が多い。なにしろ、自分たちが頑張って育てたからこそ、可能になった子どもたちのそこそこの暮らしである。自分たちが頼ることで、その生活を揺るがすわけにはいかない、と。 それに「男は家庭より、仕事が第一」「男は家事をするものではない」という親が持つ古いジェンダー意識が、窮地に陥ったときでも息子に支援を求めることを躊躇させ、若かった頃と同様、HTさんが言うように息子を「お客さん」扱いし、事態をとり繕い、息子がたとえ親思いだったとしても、親の苦境を知らず関わらないままの関係がつくられることは多い。 父親が先に倒れた場合なら、母親が息子・娘に助けを求めることもあるだろう。しかし、母親が先に弱り、暮らしの切り盛りを父親がするようになった場合は、男親の面子もあり、子どもに窮状を訴え、支援を求めることをためらい、ますます事態は悪化する。 超長寿化が進むなか、まだ元気だった頃の意識のままで歳月が過ぎ、親が超高齢期に達するか、それ以前でも、病気などで倒れたりすれば、土壇場まで行ってしまう。そうしたリスクをはらんだ親子関係になりやすい。
春日キスヨ