「正月とお盆しか親に会わない」子どもが見落とす高齢親の重大リスク
だから、「ハレの日」の、いつも以上に元気に振る舞い、うわべを繕った親の姿だけしか目にしてこなかった息子・娘が、老いが進み、自分の力だけでは生活できなくなった親を受け止め、どのような手助けが必要かを判断し、介護保険サービスの利用などにつなぎ、親もそれを素直に受け入れていく方向で親子関係を組み替えていくことは、なかなか難しい。 加えて、これは傾向として息子の立場の男性に多いのだが、実家の近くに姉妹や世話好きの従姉妹などの女性親族が住む場合、本人は自覚しないままに責任逃れの関係となりやすい。 なぜなら、「日常の家事や親の世話は、女の役割」という、ケアをめぐるジェンダー意識がしみついており、親が何を思い何を望んでいるか、どんな状況・状態にあるかを、親の態度や言葉の端々から読み取り、親のために自分がどんな手助けをすべきか、必要な支援は何かなどを考え、行動する力が、女性より乏しい人が多いからである(もちろん、娘の立場の女性でも、親の近くに、親と仲がよく、頼りになる他の兄弟姉妹、親族などがいる場合などは、同様の関係になりがちであるが)。 ● 高齢の親はなぜ息子には遠慮し 娘ばかりに負担をかけるのか こうした親子関係になりがちなのは、子どもの側に一方的に非があるわけでもなく、男性優位の考えや性別役割分担意識が強く残る、高齢の親側の意向も大きく関わっている。 近所に住む超高齢期の叔父夫婦の暮らしに姪の立場で関わる女性GOさん(60代)は愚痴をこぼす。 GOさん「90歳を超えた叔父と、89歳の叔母、2人が近所に住んでいるのですが、何かあると、すぐ私に電話してくるんです。息子2人は東京で、まあまあの暮らしをしていて、無理をすれば帰ってこられるのに、帰ってこない。 で、いまの状況を叔父も叔母も息子たちにちゃんと伝えればいいのに、『あの子らは仕事で忙しい』と。それでいて私にはジャンジャン電話をかけてくる。私も忙しいのに。息子たちも、海外旅行に行く時間はあっても、親の様子を見に帰る時間はないみたい」 また、弟が1人いるが県外に居住、90歳間近の両親の自宅からバスで1時間ほどの距離に住む娘の立場の女性も言う。