「正月とお盆しか親に会わない」子どもが見落とす高齢親の重大リスク
● 昭和43年と現代の驚きの違い 8割もの高齢者が子と同居していた 「昭和43年の高年者実態調査によると、高年者中、現在、子と同居しているものは全体の80%、子と別居しているものが14%、残りの6%は子がないものとなっている。子のある高齢者で子と同居しているものは85%になり、別居しているものは15%にすぎない」 1972年出版の書籍には、このような人口問題研究者の報告がある(那須宗一、増田光吉編『老人と家族の社会学』垣内出版)。 ここでの「高年者」とは、当時子育て期にあった現在の高齢者の親世代にあたる人たちで、全体の80%が子どもと同居だという。わずか一世代の間に生じた高齢者の生活環境の、なんという大きな変化! 家族変化だけではなく、長寿化も進み、平均寿命も、1975年の男性71.73歳、女性76.89歳から、2023年には男性81.09歳、女性87.14歳へ。同時に、80代、90代のひとり暮らしだけでなく、夫婦2人で暮らす人も増えている。 こうした状況のなか、親が何らかの支えを必要とする年齢になっていても、離れて住む息子・娘との関係は、親がまだ若く元気だった60代、70代の頃の形にとどまっている。そういう家族がけっこう多い。なぜだろうか。 知人の50代後半の男性が、「親は80歳過ぎですが、僕が持つ親の年齢イメージは、親が60代ぐらいの元気な頃でフリーズしていますねえ」と語っていた。都会の大学に進学したのをきっかけに、卒業後もそのまま都会で暮らし、実家に帰るのは盆と正月だけ。そのとき目にする親の姿は、高齢でも、自分をもてなすために忙しく立ち働く姿で、それがいまも続いているという。 ● 元気な頃の親のイメージのまま ハレの日だけのつき合い 高齢でもまだ若い60代、70代くらいまでの親が、離れて暮らす子どもとつくる関係は、年に2回の「盆・正月」の帰省や、家族旅行などの家族イベント、結婚式、葬式、法事などでの儀礼的つき合いだけ。これはいわば、子どもが成人したあとの親子関係が「ハレ(晴)の日」仕様のもので、日常生活で生じるさまざまな困りごとや苦労など、つまり互いの「ケ(褻)」の部分を、親子が互いに目にし、分かち合うことがない形のものである。