「岩だらけなのは分かっていた」オジェ、横転クラッシュの責任を認める。運営批判で執行猶予付きの罰金も|WRCアクロポリス・ラリー
WRC(世界ラリー選手権)第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャで、トヨタのセバスチャン・オジェは2位フィニッシュを目前としながら最終パワーステージで横転クラッシュ。ポイントリーダーのティエリー・ヌービル(ヒョンデ)が優勝したため、タイトル争いでも痛手を負ってしまった。 【動画】民家の脇を時速150kmオーバー!? WRCラリージャパン、猛スピードで疾走するラリーカー集 オジェのマシンはパンクに見舞われたことで姿勢を乱して横転。幸いクルーは無事で、ダメージを受けたGRヤリスのサスペンションを修復してなんとかフィニッシュすることができた。現在のWRCでは土曜日までの順位でもポイントが付与されるため、3番手で最終日を迎えていたオジェは13ポイントを持ち帰った。 最終ステージで何が起きたのかについて、オジェは次のように語った。 「ここはあちこちに岩があって、それは分かっていた。僕がぶつかったのも岩だらけの中を進まなければいけない場所で、ぶつかるかどうかは数センチ単位の問題だった」 「ブレーキングでパンクに気づいた時は、予測が甘かった。ちょうど高速で路面が盛り上がった部分だったので、ブレーキが効かずにアンダーステアが出てしまって、横転した」 「状態は良くなさそうだったし、ホイールが外れかけていたので修復できる自信はなかったんだけど、幸運にもマシンを直すことができた。チームのためにできることをしたんだ」 「パンクから起きたこのクラッシュの責任を自分が取ることに関しては問題はない。素早く対応できなかったんだ」 オジェはラリー初日の時点では首位につけていたが、SS5でターボ関連のトラブルが発生。2分半以上のロスがあり、優勝争いからは脱落した。今季はフルタイム参戦ではなく2戦を欠場(それに加えてラリー・ポーランドもレッキでの交通事故の影響で欠場)しながらも、優勝3回と2位2回を記録してタイトル獲得にも望みを繋いでいたオジェだが、これでヌービルとの点差は38に広がった。 タイトルを争えるとは思っていないというオジェは、次のように語った。 「(タイトルの望みは)今までもあまりなかったし、良い方向に進んでいないのは確かだ」 「僕にとっては大した事じゃない。それ(トラブル)が起きた時は『今週末はどうなるだろうな』と思った。運の要素が大きな役割を果たすだろうとね」 「この2戦はチームにとって厳しいものだった。特に日曜日は、ここ数日では非常に重要な日になった。チャンピオン争いにおいて不利な状態に置かれてしまったんだ」 「完璧に近いことはたくさんできたけど、それらをうまくまとめてゴールまで運ぶことができなかったし、運も味方してくれなかった」 ■ステージ終了時の発言で3万ユーロの罰金 さらにオジェはラリー終了後、金曜日の走行終了後にテレビで発したコメントに対して、3万ユーロ(約475万円)の罰金を2年の執行猶予付きながら科されてしまった。 オジェは、ラリー1車両の間に3分ギャップがありながら、ステージ上に舞い上がった埃が収まっていないことに苛立っていた。この問題に不満を漏らしたのはオジェだけでなかったため、次のステージからは主催者により4分の間隔があけられた。 SS1の終了後にオジェは、「WRCが決して学習しないのは腹立たしい。埃が舞っていることは明らかだ。でも彼らは『そんなことはない』と言う。何を考えているんだ? 何も考えていないんだろうね。クレイジーだ」と語気を強めて語った。 スチュワードの報告書によると、オジェは安全上の問題に関連していたことから感情が昂ったままに発言をしたと説明しているといい、特定の誰かに向けた発言ではないと釈明し、謝罪したという。 報告書にはこう記されている。 「カイ・リンドストローム(トヨタのスポーティングディレクター)は、オジェがSS2の終わりにRally.tvで新たにコメントし、SS2から競技車両間の間隔を広げてくれたことに感謝したことを考慮するよう、スチュワードに求めた」 「さらに彼(リンドストローム)は、彼(オジェ)がラリー開始前、競技役員を通じて、3分ではなく4分のギャップを設けることを求めていたと補足した」 「スチュワードはオジェの発言が、特定の誰かに向けられたものでなかったとしても、FIAとその関係者、そして観客、競技者、関係者の安全のためにラリーに従事している地元オフィシャルや何百人ものボランティアに直接不利益をもたらすものであると判断した」 「モータースポーツのイベントは、チームとドライバーをサポートするためにしっかりとした体制で組織されている。彼らの要求や問題、クレームにどう対処するかは、明確な手順で定められている」 「たとえオジェの発言が安全上の問題に関連するものであったとしても、それを(罰則を)軽減する材料として考慮することはできない」 「何人も自分の考えを表現する自由があるが、スポーツの利益に反する侮辱や行為を犯さないように常に注意しなければならない。テレビの生中継やソーシャルメディアを通じての発言は、世界中の何百万人もの観客に公開される」
Tom Howard