松雪泰子 わが子に伝える田舎育ちの私流「情報に振り回されない生き方」
1991年にテレビドラマでデビュー以来、映画、ドラマ、舞台と常に一線級で活躍している女優・松雪泰子。そんな彼女が、川端康成の小説を現代版として映画化した『古都』で主人公の双子姉妹を一人二役で演じている。京都を舞台に変わりゆくもの、残していかなければいけないもの……映画の持つ強いメッセージは、松雪が常日頃から考えていることとリンクしているという。母として、女優として伝えたい想いを語ってもらった。
「進化しているようで退化している」そんな時代の子育て論を展開
物語の冒頭、京都の古い町家が壊されていくという象徴的なシーンが映し出される。 「織元が閉鎖に追い込まれ、西陣から機の音が聞こえてこない。繊細で豊かな伝統的文化をなくしてはいけないと思うし、物言わぬ中にたくさんの心があって、それを察するという日本人の精神も忘れてはいけないと思うんです」と松雪は変わりゆく現状に目を向ける。 コミュニケーションツールの発達と多様化により、便利で豊かになった世の中。しかし松雪は「そのことによって五感がどんどん遮断され、いままでキャッチできた感覚が失われていくような気がします。私は田舎育ちで、子供のころから不便なことが多かったからこそ生まれたコミュニケーションもたくさんあったんです。すごく進化しているようで、実は退化しているような気がして、何も考えなく、何も感じないという方向に進んでいるようで怖いんです」と警鐘を鳴らす。
「便利で安易な方向に進まず、ちゃんと教えていきたい」
松雪自身、女優であり一児の母である。 「便利で情報過多な世の中なので、安易な方向に流れていくきらいがあります。そういう子は、考える力や決断する力、感じる力が身につかないんじゃないかという危惧があります」と語ると、「私にも子供がいるので、情報に振り回されない時間を過ごすことを大切にしています。一方で、色々な物事を経験して、しっかり想像力を養い、感じることが大事だと思っています。例えば、うちの子は、田植えをしてお米を育てるというような授業をする学校に行っていたんです。そうするとどうやってお米ができるのかということを、経験として得られる。ご飯を食べるときに、どれだけの人が携わっているか知っていれば、感謝もできるし、思いやりを持つことができるんです。便利で安易な方向に進まず、ちゃんと教えていきたいと思っています」と持論を展開した。