松雪泰子 わが子に伝える田舎育ちの私流「情報に振り回されない生き方」
女優はやりたかった仕事とは全く違った
「想像力を働かせることにより、自身の未来を作っていくんです。進む道を決めるのは自分のイマジネーションとビジョンです」と語った松雪。25年という長い間、女優として活躍しているが「自分がやりたかったこととは全く違う職業でした」と胸の内を明かす。 「ものづくりに興味があったのですが、自分が表に立って表現するというタイプではなかったんです。美術とかアートが好きだったので、デザインの仕事に進みたかったんです」と当時を振り返る。 しかし「進路を決めるとき、明らかに演じるという仕事の方に強い流れがありました。どちらをチョイスしても良かったと思います。今でも、自分がデザイン系の仕事を選んでいたら、どんな人生になっていたのかと考えることがあります。だからといって現在の道を後悔しているわけではありません。しっかり想像力を働かせて自分で決めた道ですから。肉体を使って表現することもすごくクリエイティブなことですしね」と笑顔をみせる。 女優業を続けてきたから出合った本作。 「いま60年代~70年代の映画を観たいという欲求に駆られているんです。いまよりも圧倒的に不便な時代の中、表現を工夫して作られている作品にはすごい力があるんですよね。説明過多ではなく、言葉は少ないですが、丁寧な描写を重ねて、観ている人に想像する余地を残してくれる。今回の『古都』という作品にも、古き良き作品に通じる余韻だったり、思いを感じていただければと思います」と語っていた。 (取材・文・撮影:磯部正和) ------------------------- ■松雪泰子(まつゆき・やすこ) 1972年11月28日生まれ。佐賀県出身。1991年にテレビドラマ「熱血!新入社員宣言」で女優デビューを果たすと、テレビドラマや映画などコンスタントに出演を続ける。2006年公開の主演映画『フラガール』が第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するほか、各映画賞で高評価を得る。その後も『余命』(2009年)や『この空の花 長岡花火物語』(2012年)などで主演を務めるなど、数々の作品で存在感ある演技を披露している。