米農家廃業急増の背景 肥料や農薬高く 価格転嫁は鈍く経営圧迫
稲作農家の倒産・廃業件数が今年、過去最多を更新する見通しとなったことが5日、調査会社の帝国データバンクの調べで分かった。肥料など生産資材の価格高騰分が米価に十分転嫁されず、農家経営が圧迫され続ける状況の表れとみられる。今後の米の安定供給を確保するためにも、農家が再生産できる水準への一定の価格引き上げが重要であることが浮き彫りとなっている。 【グラフで見る】農業資材費の推移 1~8月に発生した米農家の倒産は6件、休廃業・解散が28件で、合計34件。23年は通年で35件で過去最多だった。24年通年ではそれを上回り、過去最多を更新する見通しだ。集計したのは、負債1000万円以上の法的整理による倒産や休廃業・解散の件数。法人化していない家族経営を含めると、廃業はさらに膨らむとみられる。 背景にあるのが生産コストの高止まりだ。農水省の7月の農業物価指数(20年の平均価格を100)は、肥料が139、農薬は115、光熱動力は132と高騰する一方、米は95と低迷している。 同社は、米の消費減が続く中で価格転嫁もしにくく、農家に利益が残らないことから翌年の生産に必要な費用が捻出できず、米作りを断念するケースも多かったと分析。「資材高騰と値上げ難で農家が経営を諦める状況が続けば、将来的に主食の米が安定的に供給できなくなる可能性もある」とみる。 24年産米は、JAなどが農家に支払う概算金の水準が大幅に上昇。JA全農の各県本部などからは概算金の水準について、生産コストの上昇を踏まえ、農家の営農継続を重視する観点で設定したといった声が上がる。 (玉井理美)
日本農業新聞