「mRNAワクチン」生産効率化など…チップトン、晶析装置で攻勢かける
チップトン(名古屋市南区、小林知之社長)は、結晶の連続晶析が可能な装置「テイラー渦流ナノリアクター(TVF)」の製造販売事業を強化する。バレル研磨関連製品を主力とする同社だが、今後は医薬品やバッテリー製造などで需要の伸びが期待できるTVFを成長エンジンとし、海外展開やラインアップ拡充を推進。2026年3月期にTVFの売上高で、24年3月期比倍増の10億円を目指す。 TVFは医薬品や2次電池の正極材などの製造の際に、結晶を晶析する工程に使える。円筒内にそれより小さい径の円筒がある二重構造の円筒を持ち、外筒と内筒のすき間に、取り出す成分が内包する液体を流し込みながら、内筒を高速回転させる。これで生じるドーナツ状の渦の流れ(テイラー渦流)を用いて液体を撹拌し、連続的に晶析を行う。 この技術がメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの生産効率化や、電池の正極材の小型化につながることから、高い成長性が見込める事業として力を入れる。 このほど米国デトロイトにTVF2台などを置いた試験加工場を開設した。顧客が試薬を持ち込みTVFを試せるテストルームを備え、医薬品製造の本場である米国の需要取り込みを狙う。また、これまで容量が最大20ミリリットル、同106ミリリットル、同1リットルの3タイプを展開しているが、25年秋ごろに同10リットルの大型機を投入して、量産用途に対応させる予定。 チップトンはバレル研磨機の主軸の設計技術をもとにTVFを開発。24年3月期の同社全体の売上高は52億円で、その内、5億円がTVF事業だった。26年3月期にはそれを倍増させ、同期の会社全体の売上高を60億円に引き上げることを目指す。