医療での注目度上昇「スピリチュアリティ、信仰と心身の健康」の関連性
統合医療など、医療においては精神性(スピリチュアリティ)や信仰心が治療に取り入れられるようになってきている。それは今後、私たちの心身の健康に真の利益をもたらすようになるかもしれない。 (宗教とは無関係な)スピリチュアリティ、組織的宗教への信仰といった信念は、実際に癒しをもたらし、心身の健康に好影響を与えていることを示す研究結果もすでに多数、発表されている。そうした影響を及ぼす主な理由として挙げられているのは、以下の4つのことだ。 ■1. うつ病と不安障害の症状が改善し、孤独感が和らぐ がん患者を対象に行われた研究では、礼拝、感謝、他者のための祈りなどが、うつ症状の軽減と関連していたことが示されている。反すう(ある物事について繰り返し考え続ける)が減少すること、社会的支援が増すことが、役に立っていたとみられている。 共通の信条によってつながりを持つ宗教に基づいたコミュニティなどは、社会的な居場所や支援のネットワークを提供している。共有されるコミュニティは、帰属意識や友情、病気になったときに不可欠なサポートを提供する。 宗教とは無関係な「祈り」も、うつや不安の症状の軽減、楽観的な考え方を促すことに関連があるとみられている。病気が進行している人の場合でも、精神的なウェルビーイングは不安やうつ症状が軽いことと関連している。 ■2. 健康的な生活への意識が高まる 健康的なライフスタイルの選択は、身体的な健康につながる。多くの宗教はアルコールや薬物といった有害な物質の摂取をやめるよう推奨しており、信仰心の深い若者には、武器の所持、けんか、飲酒運転といった危険な行動が少なく、適切な栄養と運動、休息をとるという健康的な生活をしている人が多くなっていることが、研究結果で示されている。 また、テキサス州で行われた調査では、宗教的な活動によく参加していることと、シートベルトの着用、運動、禁煙、飲酒量が少ないなど、さまざまな面での健康的な行動との関連性もみられたという。 ただ、乳がんを克服した人を対象とした研究では、宗教的な活動に関わっている人の方が野菜や果物の摂取量が多かった一方、運動量が少なくなっていた(礼拝に出席する時間が長くなることで、運動する時間が減っていた可能性がある)。