“次世代プレイヤー”黒川想矢は何を担う? 『怪物』から『嘘解きレトリック』までの歩み
黒川想矢が『からかい上手の高木さん』で見せた“新しい顔”
黒川を一躍有名にしたのは、やはり映画『怪物』(2023年)だろう。坂元裕二が脚本を手がけ、是枝裕和が監督を務めた同作は、カンヌ映画祭をはじめ、国内外で大きな話題になった。興行的にも成功し、安藤サクラ、永山瑛太、柊木陽太とともに主演を務めた黒川に俳優賞をもたらし、多方面から注目を浴びることになった。これ以前にも出演作はあったが、やはりこの作品で黒川想矢という存在を認識した方が圧倒的に多いのではないだろうか。これからも長く続いていくのであろう彼の俳優人生において、いつまでも重要作であることは間違いない。 しかし、大切なのは代表作を得た“その後”である。繰り返すように、彼の俳優としての人生はこれからも続いていくわけであり、今後もさまざまなジャンルの作品や、いろいろなタイプのキャラクターを演じ続けていかなければならないわけだ。もちろん、いち観客として、まだ10代の彼に重責を与えるようなことはしたくない。けれども続けていくならば、そういうことになる。 『怪物』を黒川のキャリアの起点とするならば、かなり順調な走り出しといえるだろう。月島琉衣とダブル主演を務めた『からかい上手の高木さん』(2024年/TBS系)があり、コミカルなテイストの本作は、『怪物』とは明らかに異なる作品だといえる。これが世に放たれた時点で、黒川の俳優としての立ち位置は『怪物』の頃とは大きく変わった。 主演作なのだから、世間的にいえば「新しい顔を見せた」といえるだろう。とはいえ、まだ彼は10代だ。この流れの中に、『嘘解きレトリック』はある。15歳といえば、子どもと大人のちょうどはざまにある年齢であり、いまの黒川だからこそ表現できるものが、いまの黒川にしか表現できないものがある。それを見逃すのはもったいない。さあ、第10話まで続いてきた本作に何をもたらすか。どんな“メッセージ”を浮かび上がらせるのか。
折田侑駿