「社長、あの人とは働けません」退職希望者が続出…元凶の“年上の新入社員”をクビにできるのか?
●「相当額の金銭補償などで退職を説得」という方法も
──解雇できない場合、どのように対処するべきなのでしょうか。 今回の相談内容を踏まえると、対象社員は、相談者の注意に対し、「指摘されたことは直す」と応じるなどコミュニケーションは一応取れているとのことなので、まずは注意・指導を重ねることが筋といえます。 その際には、問題行動があったことや、注意・指導を実施したことを証拠として残しておくために、書面やメールなどにより行うことが適切です。 また、配置転換で折り合いが悪い他の社員と勤務場所を引き離すことが可能であれば、配置転換を実施することも考えられます。 他方、他の社員の引き留めのためには、注意・指導を重ねている時間的余裕もなく、配置転換を行う場所もないというケースでは、対象社員に退職を勧奨し、辞めてもらうということも考えられます。 しかし、退職勧奨については、あくまで任意に退職を促すことしかできず、これが行き過ぎると、それ自体不法行為(民法709条)となり、損害賠償を請求されるリスクもあります。 相当額の金銭補償などとセットにして退職を説得し、任意に辞めてもらうということが一つの手段として考えられるでしょう。 対象社員が退職勧奨に応じない場合でも、強引に(不当に)解雇することは、適切ではありません。そのように解雇を実施しても、裁判等で争われ解雇が無効になれば、復職を認めざるを得ませんし、その間の賃金を支払う必要もあり、会社にとってのリスクが非常に大きいためです。 【取材協力弁護士】 黒柳 武史(くろやなぎ・たけし)弁護士 京都府出身。2007年大阪弁護士会で弁護士登録。2020年京都弁護士会に登録換え。取り扱い分野は、労働事件を中心に、建築・不動産に関する事件や、一般民事・家事事件など。 事務所名:賢誠総合法律事務所 事務所URL:https://kensei-law.jp/