30年で死亡者数が8倍“難治”の膵がん 「1cm以下で手術すれば9割が治る」検出率78.6%の膵がんドックで早期発見
がんと診断されてからの5年生存率がわずか8%余りと低い、膵がん。ただ近年は、早期に発見し手術ができた場合の5年生存率が、10年前の約20%から50%にまで上昇している。早期手術につなげるために期待されているのが「膵がんドック」だ。 【画像】寺田医師が担当した患者のCT画像から膵がんを見る
膵がん死亡者数 2022年で約4万人
福井県済生会病院では、早期に自覚症状が少ないことから「膵がんが心配だ」という多くの患者からの声を受け、2024年10月、県内で初めて膵がんドックを導入した。 外科副部長の寺田卓郎医師は「膵がんは昔から“難治がん”といい、治りにくいがんの代表で、日本全国で死亡者数が第4位となっている。最近は患者数が非常に増えているというのも大きな特徴」と話す。 国立がん研究センターによると、膵がんの死亡者数はこの30年で8倍以上に増加し、2022年には全国で約4万人が死亡している。 膵がん患者のCT画像について、寺田医師は「膵頭部、膵体部、膵尾部とあり、パッと見て膵管の拡張が見られると異常なのが分かる。これを頭側に追っていくと、膵頭部で膵管が途切れていて、そこに黒い領域があるのが、典型的な膵頭部がんの所見」と説明する。
自覚症状が現れた場合“手遅れ”
症状としては黄疸(おうだん)やひどい腹痛、背中の痛みが挙げられるが、自覚症状が現れたときにはかなり進行していて、がんが見つかった人の半数が、手術で治療できないほど手遅れだという。 寺田医師が担当した患者の1人は、上腸間膜動脈というお腹の大事な血管を巻き込むようにがんがあり、切除不能だったという。 患者は主に高齢者だが30代や40代でもかかる可能性があり、特に注意が必要なのは糖尿病、飲酒・喫煙の習慣がある、肥満、家族に膵がん患者がいる、という人だ。糖尿病の人や喫煙の習慣がある人の発症率が1.7~1.9倍にものぼる。 寺田医師は「膵がんは再発率が非常に多い病気。基本的には5年間、術後の様子を見るが、再発するときは元々膵がんのあった場所や、遠隔転移して肝臓や肺に転移することが多い」と注意喚起する。 国立がん研究センターによると、診断を受けた後の生存率を測る「5年生存率」はわずか8.5%で、胃がんや腸がんに比べてかなり低い数値となっている。 ただ、寺田医師によると、手術ができた場合の5年生存率は上がってきていて、10年前は約20%だったのが、近年では約50%にまで上昇している。そのカギはやはり「早期発見」だ。