6億人超の市場規模に! 2015年末に発足する「ASEAN共同体」とは?
「東南アジア諸国連合(以下、ASEAN)共同体」が今月末、正式に発足します。ASEAN加盟国は経済を中心とした統合を目指すことになっていますが、具体的にどんな姿を描くのでしょうか。ASEAN設立の経緯をおさらいするとともに、ASEAN共同体の今後の動向を解説してみましょう。
ASEANの歴史
ASEANは、1967年に設立された東南アジアの地域協力機構です。ベトナム戦争を背景に、地域の平和や安定を守るために設立されました。当初はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国でスタートしましたが、現在はブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアを含めた計10カ国が加盟しています。 毎年首脳会談を開くほか、閣僚会合および高級事務レベル会合を開催し、政治・安全保障、経済、社会、文化、対外諸国の関係など、幅広い議論を行っています。
なぜ、ASEAN共同体をスタートさせるの?
ASEAN発足当初は、比較的緩やかな協力形態でした。しかし、中国やインドの台頭、アジア通貨危機などの国際情勢を受け、域内統合への機運が高まったのが共同体設立への主な背景です。 1997年の首脳会談では、2020年までに「ASEAN共同体」の設立を目指すビジョンを提示。その後、03年の会合で各国の首脳が「第二ASEAN協和宣言」を採択し、20年までに設立することで合意しました。 共同体は、「ASEAN経済共同体(AEC)」「ASEAN政治・安全保障共同体(APSC)」「ASEAN社会・文化共同体(ASCC)」の3本柱で構成されます。その後、07年の首脳会談では共同体の設立を5年前倒し、15年とすることを決定しました。そして今年11月、ASEAN首脳会談で「ASEAN共同体」の創設が正式に宣言されたのです。 共同体のなかでもっとも注目されているのが経済部門のAECです。今回のAEC設立は、「単一の市場・生産拠点」「競争力のある経済地域」「公平な経済発展」「グローバル経済への統合」の4つの目標が掲げられ、モノやヒト、サービスの流動化を目的としています。 具体的には10年、先行加盟国が一部の例外を除いてASEAN域内における関税を撤廃しましたが、 18年までにはすべての加盟国が域内の関税を全廃。さらに、税関手続きの簡素化や熟練労働者の移動緩和といったヒトの移動、サービス分野の自由化を目指します。 ただし、関税撤廃以外の取り組みは、実質先送り状態です。ASEANは各国の主権が尊重されているため、罰則や強制力はありません。加盟国内での経済格差や開発格差があり、果たして本当に実現できるのか、その確実性は大きな課題となっています。