マイナ保険証へ一本化で「コスト削減」の政府試算は“幻想”だった…莫大な税金のムダ遣い? 試算から除外された「隠れコスト」の正体
「普及促進キャンペーン」のための人件費等も「試算外」
他にも、金額が明らかになっていないものがあります。 人気キャラクターが刷り込まれたチラシが大量にまかれ、各地の商業施設ではマイナンバーカードを作れる出張所が開設されました。 各自治体も国を挙げて普及促進に取り組み、全国の役所で担当したスタッフも膨大な人員になります。
“1兆円超”と推測される「システム開発・運用費」も「試算外」
もちろん、システムの開発・運用費も莫大です。 開発費は不明ですが、2022年11月14日の朝日新聞デジタルの記事によると、マイナンバーカード管理システム運用の関連費用で2021年度に113億円、2022年度には290億円かかっています。 マイナンバーのシステム開発費も含めると、菅首相が当時の国会答弁で開発費が8800億円だと答弁しているので、現時点では1兆円を超えていると推測できます。 しかも、保険組合の側にもシステム改修費用がかかっているのですが、こちらは計算に入っていません。 これほどの投資を回収するにはいったい何十年かかるかわからないほどです。 そうだからこそ、莫大なコストをかけながら「ゼロ」でシミュレーションを組むという恐ろしい試算を出してきているのでしょう。
莫大な税金を使い、無意味な業務を増やし、医療現場は大迷惑
結局、2024年に入ってからはというと、通常国会などでマイナ保険証の問題を指摘されると、「これ1枚で便利になる」「これ1枚で便利になる」と、壊れたテープレコーダーのように繰り返す状況に落ち着くようになりました。 一時期よく言っていた「コストが削減できる」というセリフが、いつの間にか立ち消えになりました。金銭的コスト以外も含めて社会的コストが莫大であることが誰の目にも明らかになったからなのでしょう。 なお、マイナ保険証の利用率が想像以上に上がった場合には金銭的コストの削減が多少増えたとしても、それと引き換えに社会的コストは今とは比較にならないほど増えていくことは留意しておく必要があります。 まず、医療現場のコスト負担でいえば、資格確認のパターンが増えて複雑になることで窓口対応に苦労するシーンが増えるでしょう。 マイナ保険証で資格確認する際にエラーが出ることもあるでしょうし、要配慮者の方で資格確認書を忘れたため、資格確認に手間取ることもあるでしょう。 スマホでマイナポータルのPDFを出そうと、もたつく方もいるでしょうし、そもそも何を持ってくればいいかわからない高齢者に説明しなければならない場面もあるでしょう。 「マイナ保険証担当スタッフ」という職業が世に生み出される可能性も否定できません。 実際、全国保険医団体連合会(保団連)の調査でも「スタッフを増やして対応せざるを得ないと思う」と回答している医療機関が18%あります(【図表1】参照)。 すでに総合病院では、政府からの圧力も手伝って、マイナ保険証専用レーンを設けて、ただでさえ人手不足の医療現場に専用の人材を配置させられています。 もはやマイナ保険証は医療現場に迷惑を与える存在にすぎません。
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