マイナ保険証へ一本化で「コスト削減」の政府試算は“幻想”だった…莫大な税金のムダ遣い? 試算から除外された「隠れコスト」の正体
社会的費用がかさみ、役所も保険組合も疲弊するおそれ
一つ目は、マイナ保険証の利用率が1割にも満たない状態のままで推移した場合に、「社会的な費用」が相当程度かかることです。 マイナ保険証の登録者と実際の利用率の差分に当たる人たちはマイナ保険証に登録しながら使ってないことになりますが、その数は数千万人になります。 この人たちには資格確認書(保険証の代わりになるもの)は届きませんが、おそらく届かなくても気づかない人が多く発生すると思われます。 その人たちは、あるタイミングで保険料を払っているのに保険医療が受けられなくなるので、大騒ぎになる可能性が十分に考えられます。 また、その騒ぎに対応しなければならない役所や保険組合、コールセンターなどは疲弊することにもなります。このときにかかる社会的コストは、可視化されないものも含めれば相当なものとなるでしょう。
「インフレ」ですでに試算が狂っている
二つ目は、「インフレ」を考慮していないということです。 現状の試算である76億円~108億円のコスト削減は資格確認書や「資格情報のお知らせ」の発行コストも見込んで出した数字のようですが、昨今の「インフレ」はまったく考慮されていません。 直近の例を挙げると、郵便料金は2023年段階では「84円」の想定で試算されていましたが、10月1日から一気に30円値上がりし、「110円」になることが決まっています。 この差分は、数千万の人に郵送するとなった場合に、かなりの金額の上ブレとなってあらわれるでしょう。
試算から除外された巨大な「隠れコスト」も
三つ目は、試算の中に入ってない巨大な「隠れコスト」があるということです。 たとえば、2023年の補正予算においてマイナ保険証推進費として887億円計上されていますが、こういったものはコストシミュレーションの際には除外されてきました。この広報費用を回収するだけで、よく見積もって7~8年はかかってしまいます。 また、すでにマイナンバーカードの取得やマイナ保険証の登録推進でマイナポイント事業を行っていますが、1兆3779億円(2024年5月13日段階)の予算を執行しています。これも入っていません。 これらについては、「他の事業と重なる部分があり、純粋なマイナ保険証のコストとはいえないため、試算に入れない」との説明がなされていますが、ひどい話です。 少なくともポイント事業で「マイナ保険証に登録したら1人当たり7500円」も配っていましたから、「登録者の増加数×7500円」はシミュレーションに入れないといけないでしょう。 「1000万人」でも「750億円」となりますが、どのくらいポイント事業により増えたかの詳細な数字は出ていません。 しかし、マイナンバーカードの取得理由のダントツ1位が複数の調査で「ポイントがもらえるから」だったことや、マイナ保険証に登録している人が50%を超えているのに利用率が低迷している現状も鑑みれば、千万単位の人が「マイナポイント目当て」でマイナ保険証に登録していると推測できます。
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