マイナ保険証へ一本化で「コスト削減」の政府試算は“幻想”だった…莫大な税金のムダ遣い? 試算から除外された「隠れコスト」の正体
保険組合に過大な業務負担を与える
医療機関に続いて、従来、健康保険証を交付していた各保険組合も、多くのコスト負担を強いられます。 これまでも各保険組合は、被保険者が転職して会社が変わったり、結婚して氏名が変わったりした際には、その変更に応じていくつかの対応はありました。しかし今後、取り扱わなければならない書類の種類や交付頻度が大幅に増加します。 真っ先に思いつくのが「資格情報のお知らせ」です。これは先ほど述べたように保険者情報が書かれている紙で、マイナ保険証の顔認証付きカードリーダーに対応していない医療機関があることから生まれたものです。 この「資格情報のお知らせ」の恐ろしさはいくつもあるのですが、なかでもマイナ保険証登録者全員に交付しなければならないため、送る人と送らない人の分類が膨大に発生するというところが非常に大きいでしょう。 一家族の中でマイナ保険証の人とそうでない人を分け、さらにそうでない人の中に資格確認書とマイナ保険証を両方使う人がいないかの確認をするなど、考えるだけで頭が痛くなるような業務に追われることになります。
“事業破綻”する保険組合が続出する恐れ
2024年の秋には84円から110円へ郵便料金の値上げが発表されていて、保険組合は財政的にも苦しくなるとみられます。 そんななかで、無駄な仕事が増え続けるという状況は、保険組合の破綻を増やす引き金にもなりかねません。 他にも、マイナ保険証をもたない人から資格確認書の更新申請があれば、交付しなければなりません。 こういった各種書類の交付業務のコスト増に加えて、日常的には、負担割合の間違いがあった場合の返戻業務にも追われることになるでしょう。保団連の調査でも、オンラン資格確認のトラブルが原因の返戻が14.2%の医療機関であったと答えています(【図表2】参照)。 医療機関側も大変ですが、保険組合はそれが集中しますので、もっと大変なことになります。 これだけよけいな事務負担が増えると、人員を増やさなければならず、人件費が保険組合の経営を圧迫することになります。それにより、事業が破綻して解散に追い込まれる保険組合が出ることが懸念されます。
北畑 淳也(哲学系ゆーちゅーばーじゅんちゃん)
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