親は「子どもにスポーツや部活動をどこまで頑張らせるか」、勝利至上主義の世界で生きる子どもを支える方法
こうした中では自分の意見を考える時間がなくなり、上司の正解や顔色を探って正解を探してしまうと危惧しています。体育会系の社会を作りあげてきたのもスポーツですが、私はそれを変えるのもスポーツだと思っています。 ──その他にはどのような悩みがありますか。 ベンチ入りできない部員の親から、「子どもの練習のモチベーションが下がり、『試合にも出られないのに練習をする意味がわからない』と部活を休んでしまう」という相談もありました。これは、部活動の環境に問題があると思いました。指導者がレギュラーとそれ以外をはっきり区別しているのでしょう。部活動には参加の強制力が高いものもあるので、生徒が楽しめているかどうかが重要だと思います。親としては、部活動以外に子どもが楽しめることを聞く時間の余裕があるとさらによいでしょう。
スポーツはまだまだ勝利至上主義や成果至上主義で、試合に出られるかどうか、活躍できるかどうかなど、目に見えるパフォーマンスに力を注いでしまうものです。子どもも親の期待に応えたいと考えてしまうものでしょう。しかし、もっと長い目で、そのスポーツを生涯楽しめるか、友達づくりや健康づくりになっているかと考えられるとよりよいはずです。 ■子どもに「あえて何もしない」勇気を持つ ──小塩さんは著書『10代を支えるスポーツメンタルケアのはじめ方』(大和書房)にて、「子どもを応援する大人自身がスポーツ界のプレッシャーから解放される必要がある」としています。
本では、私の研究や実践から得た知見をもとに、スポーツに励む子どもを支える親や、部活動の顧問やコーチなどの指導者が知るべきメンタルヘルスケアの知識、競争の激しいスポーツ界で活躍するアスリートが直面するメンタルヘルスの課題やケアを優しく解説しています。ストレス社会に生きる子どもから大人まで、メンタルヘルスケアの重要性は誰にとっても欠かせないものなのです。 そこで大人の方々に伝えたいのは、「皆さんはすでに頑張っている」ということです。声を大にして、「自分に優しくしてあげて」と言いたい。大人自身に心と時間の余裕があると、子どものメンタルヘルス改善にもつながります。