JICA情報漏えい、懲戒処分を1年2か月公表せず…「事実関係の照会に時間」
フィリピンでの政府開発援助(ODA)事業の入札を巡る情報漏えい問題で、国際協力機構(JICA)が、漏えいした職員の懲戒処分を昨年7月まで約1年2か月にわたり公表していなかったことがわかった。JICAは就業規則で懲戒処分を「原則その都度公表する」と定めるが、今回のケースに関しては、取材に「事実関係の照会などに時間を要した」などと答えた。専門家は「処分の経緯も含め疑問点が多く、詳細に説明すべきだ」と指摘する。
JICA職員は、日本の円借款(有償資金協力)で行われたマニラ首都圏内の都市鉄道「MRT3号線」改修事業のうち施工監理業務について、2018年5月、JICAの見積額や比政府が作成した要員計画などの秘密情報を東京都内の建設コンサルティング会社側に漏えいした。
JICAは24年7月8日、この職員を就業規則違反で停職1か月の懲戒処分としたとホームページで発表。一方、処分の理由については「調達手続きに関する秘密情報を漏えいした」と記すのみだった。秘密情報がフィリピンの「MRT3号線」改修事業に関するものだったことや、職員がコンサル会社側に漏えいした方法などは、読売新聞の報道で同10月に判明した。
本紙が入手した内部資料や関係者の話によると、JICAは、職員が18年5月のほか、17年12月~18年1月にも同事業に関する秘密情報を漏えいしていたと認定し、23年5月1日に懲戒処分とすることをメールで通知。職員からの弁明を踏まえた上で、同20日付で停職1か月としていた。
JICA職員はみなし公務員であり、国際協力機構法で秘密保持義務が課されている。懲戒処分の公表については、JICAの就業規則に加え、中央省庁や独立行政法人などを対象とした人事院の指針でも、規律保持や再発防止の観点から「処分後速やかに公表する」と定めている。
JICA広報部は取材に対し、公表まで1年2か月近くかかった理由について、「漏えい先企業への照会が完了しておらず、調査内容の取りまとめや外務省への報告などにも時間を要した」と説明。その上で、コンサル会社側に対する照会の内容や完了時期については「漏えい先企業の名誉にも関わり、差し控える」とした。一方、照会が完了しないまま職員を処分した点については、「処分時点で職員の行為について詳細を把握し、処分するに足る情報があると判断した」と回答した。