JICA情報漏えい、懲戒処分を1年2か月公表せず…「事実関係の照会に時間」
情報公開に後ろ向き
ODA事業やコンプライアンスに詳しい北島純・社会構想大学院大学教授(政治過程論)は「巨額の税金が使われるODAでの情報漏えいは重大な不正であり、公表まで長期間を要した点だけでなく、漏えい先への照会が完了していないうちに職員を処分した対応にも疑問が残る。意図的な公表遅延も疑われかねず、詳細な説明が求められる」と指摘している。
この問題を巡っては、昨年11月に弁護士ら有識者による検証委員会が設置された。検証委は今後、漏えい先のコンサル会社関係者らに対するヒアリングなどを実施し、検証結果をまとめる見通しだ。
ODAを巡って日本企業から相手国側へのリベート提供などの不祥事が相次ぐ中、実施機関であるJICAが秘密情報漏えいという重大な不正を長期にわたり公表しなかった今回の問題は、ODAに対する「ブラックボックス」との批判や不信をより深めるものだ。
日本のODAは2022年も175億ドルが拠出され、途上国の社会資本整備などに投じられた。その原資には税金が含まれ、実施状況は国会審議の対象だ。JICAが23年5月に職員を処分した後、ただちに公表していれば、昨年にかけての国会で漏えいの事実関係がただされた可能性がある。
ところが、JICAが自らの就業規則や人事院指針に沿わない「先延ばし」に及んだため、その機会は失われた。JICAは昨年7月に公表した際も、情報漏えいが起きた事業がODAであることすら明かさなかった。さらに今回、事実確認が終わる前に職員の処分を決定していたという不可解な経緯も浮かんでいる。
一連のJICAの対応からは、国民に対する情報公開に後ろ向きな体質がうかがわれる。有識者の検証委員会には、再発防止に向け、徹底した調査が求められる。(柏原諒輪、林麟太郎)