利上げ停止から利下げサイクルで注目される債券投資、分散投資のタイミング?
為替の円安影響を受けない債券ファンドのパフォーマンスが厳しいのは、過去1年間は世界的にインフレ(物価高)を抑制しようと各国の金利が上昇傾向にあったためだ。たとえば、米国10年債利回りは昨年3月末の3.47%が今年は4.20%、英国10年債は3.49%が3.93%、ドイツ10年債は2.292%が2.298%だった。金利の上昇は債券価格の下落を表しているため、債券ファンドの運用には非常に難しい環境だったことになる。各国の中央銀行もインフレの高進を懸念して引き締め気味の金融政策を維持したため、債券で運用して収益をあげることは難しい状況だった。
ところが、今年は、米国やユーロ圏など先進国の中央銀行は金利を引き下げる段階に来たという認識で一致している。一時期よりもインフレ率の伸びが鈍化してきていること、それぞれの国において(日本を除く)、インフレを退治するために急速に引き上げた金利の水準を続けると、景気の腰折れにつながりかねないためだ。各国の中央銀行それぞれに経済指標に注視しながら、利下げのタイミングを測り始めている。世界の株価は、その動きを先読みして「利下げ期待の株高」を演じたというのが、今年1月~3月だった。米国やドイツの株価は主要株価指数が史上最高値を更新している。
そして、これまでの市場変動をふりかえると、政策金利が利下げに転換するような局面では、株式市場は軟調に推移し、債券市場が好調な展開になった。たとえば、ITバブルが崩壊した2000年5月末から2003年6月末まで、政策金利は6%超の水準から1%台まで引き下げられた。この間に米国株式は28.2%下落したが、米国債は35.6%上昇した。また、リーマンショックの2006年6月末から2008年12月末までに政策金利は5%台からゼロ%近辺に引き下げられたが、この間に株価は25.1%下落し、米国債は29.5%上昇した。利上げの停止から利下げが続いている期間は景気減速による企業業績の悪化やデフォルト率の上昇などによって株式やハイイールド債等のリスク資産は軟調になりやすいが米国債などの高格付けの債券は堅調なパフォーマンスになってきた。