勤め先の閉店で45歳で無職に…リフォームジュエリーデザイナーが再就職の中で探した“答え”
タイトルを決めてから、「雫」のモチーフを加筆
――タイトルに込めた思いを聞かせてください。 寺地 このタイトルは、「しずく」という登場人物を決めた時点で、仮タイトルとして付けていたんです。書き始めた頃は、「雫」が人名用漢字か調べる余裕がなくてひらがなにしていたんですけど、書いていくうちに馴染んできたのでそのまま彼女はひらがなの名前にしました。 タイトルは漢字にしましたが、それを機に「雫」のモチーフを作品に色濃く投影させたんです。1文字のタイトルに憧れがあったので、「ちょっとかっこいいな」と思っています。 ――じゃあ、ネックレスや名刺の「雫」モチーフも、タイトルから? 寺地 そうです。私が原稿を書く時は何度も書き足しながら進めていくスタイルなので、タイトルが決まった時に書き足しました。 ――登場人物の「しずく」は、ハンドサインも印象的でした。 寺地 今の時代に本を手元に置いていただくのだから、1回読んでおわりじゃなくて、「これはどういう意味だっけ」と読者に何回も楽しんでもらいたいという思いを込めました。最初の場面では意味がわからないけど、結末になるとわかる仕掛けです。 どんなハンドサインにするかは、私が奈良の東大寺に行った時にひらめきました。看板に「東大寺の大仏の手の形には、こういう意味がある」と書いてあって、「これや!!」って思いました。大阪に引っ越してきた女の子が看板を観たのなら自然の流れだし、「これしかない!」くらいの勢いでしたね。 》インタビュー【後篇】に続く 寺地はるな(てらち・はるな) 1977年佐賀県生まれ、大阪府在住。2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞してデビュー。2021年『水を縫う』で河合隼雄物語賞受賞。『川のほとりに立つ者は』『わたしたちに翼はいらない』『こまどりたちが歌うなら』など著書多数。2019年からは「署名っぽいサインで寂しいから」と、サインの隣にウサギのキャラクター・テラコを記している。
ゆきどっぐ