目指すはクルマ開発「ワンストップ型」施設 ホリバMIRAへ潜入 超リアルなシミュレーター
多大なコストと時間を削減 驚くほどリアル
「各メーカーは、次期モデルの車両特性の根幹的な決定を下すために、実験用プロトタイプを製作してきました。それには、数1000万ポンド(数10億円)が費やされます」。ホリバMIRAの車両特性担当上級マネージャー、トム・リー氏が説明する。 「これを仮想現実で済ませることで、開発の多大なコストと時間を削減できます。プロジェクトにもよりますが、一般的に5・6年かかる開発スケジュールでは、最大2年間を削れると見積もられます。そこに関わるリソースとCO2排出量も、減らせるわけです」 筆者も少しシミュレーターを運転させていただいたが、横方向と縦方向の負荷を再現する動きには、一定の慣れが必要らしい。リグを調整することで、試験者の経験にも合わせることが可能だという。 乗り心地の再現は、感心するほどリアル。実際には存在しない、路面の凹凸や速度抑制用のスピードバンプは、本当に通過したかのよう。三角コーンが並んだスラロームや、高速道路での車線変更でも、ピッチやロールなどの動きは自然に感じられた。 このDiM 250は、スタビリティ・コントロールを完全に再現できるほど有能らしい。現場を知らない筆者は、実際のプロトタイプで試験したいと思ってしまうが、大幅なコストカットに繋がることは間違いなさそうだ。
広大なコースで自律運転システムの開発も支援
次にお邪魔したのは、インターネット通信技術を利用したコネクテッドカーや、自律運転車両の試験施設。運転支援システムなどの開発実験を想定したテストコースが、複数組み合わされている。 あえて車線のペイントが消された道や、起伏のある区間、複雑な交差点が、コース上に点在。レンガやモルタルなどで作られた可動壁もあり、レーダーを意図的に反射させることもできる。 歩行者や自転車、走行車両なども、リモートコントロールで路上を移動する。危険な設計の交差点もある。関係者の安全を保ちながら、衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援、アダプティブ・クルーズコントロールなどの動作を検証できるという。 サッカー場20面ぶんという、広大なアスファルトが敷かれたエリアでは、高速域での衝突被害軽減ブレーキのテストも可能。高速道路のような車線が引かれた場所もあり、衝突回避や自律運転システムの精度も確認できる。 ここまで揃った試験施設は、欧州でも非常に珍しい。ホリバMIRAは、2025年のユーロNCAP、安全性試験を実施する施設の1つへ選出された。