蘇州スクールバス殺傷事件に対する中国当局や国民の反応を考察する
日本と中国の関係が、日本人学校の運営に映し出されることがある。日中関係がこじれ、中国社会において反日感情が高揚した場合だ。かつて北京や上海のような主要都市で、大規模な反日デモが起きて、大使館や領事館、さらに日系企業のオフィスや店舗が破壊された。そんな状況になれば、子供たちが日本人学校に登校できるだろうか。子供たちが乗ったスクールバスも標的になる可能性・危険性がある。そうなると、バスは運行できず、学校の臨時休校になるケースが何度もあった。だから、中国にある日本人学校では、「中国に存在する学校だから」という個別の問題もある、というわけだ。 ■沈静化を図ろうとする中国当局 6月24日に蘇州で起きた事件でいうと、警察は「偶発的な事件」だと判断している。さらに中国の外務省は「反日感情とは無関係」と説明している。 この事件から2週間前の6月10日、中国東北部・吉林市内の公園で、アメリカ人の教員ら4人が、やはり刃物を持った男に襲われ、負傷した。教員たちはアメリカの大学から中国の学生向けに勉強を教えるために訪中していた。容疑者の中国人の男は失業者とされている。 このアメリカ人が襲われた事件、それに蘇州で日本人母子が襲われた事件。アメリカとの関係や、日本との関係が影響しているとは、私は思わないし、思いたくない。ただ、アメリカ人への切りつけが起きた直後に、日本人母子を切りつける事件が続き、中国当局はピリピリしているだろう。 蘇州での事件で逮捕された男は、社会に対する不満を持っていて、それが動機とみられている。日本メディアの報道によると、現地の捜査当局が日本政府にそう伝えたようだ。容疑者の人物像については「別の町から蘇州に出稼ぎに来たものの、仕事や家族がなく孤立感を深めていた」と説明している。つまり「外国人、日本人を狙った犯罪ではない」ということだ。アメリカ人を襲った吉林での事件と同じ説明だった。 この説明を疑うわけではないが「事件の起きた街の者ではない、犯人はよそ者」「社会全般への不満が犯行動機」ということを強調している。街の安全性や、排外的な感情といった懸念から、遠いところ遠いところで、鎮静化を図ろうとする意図を感じてしまう。