【坂口正大元調教師のG1解説】信頼の「辛抱」が究極の末脚を呼んだ、武豊&ドウデュース
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <ジャパンC>◇24日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走14頭 【写真】馬主の松島代表と抱き合う武豊騎手 首差という着差だけを見れば辛勝ですが、実際はドウデュースの圧勝でした。1000メートル通過が62秒2というスロー。逃げ馬が途中で入れ替わる遅い流れで、出走14頭が1度も縦長にならない珍しい展開でした。 ドウデュースは最後方グループでずっと馬群の外。出走馬で一番長い距離を走っていますが、それを忘れさせる強さでした。最初に逃げたシンエンペラーの上がりが33秒1、途中で逃げたドゥレッツァが33秒4。前々から2着同着の2頭が33秒台前半で上がっているのですから、普通はどちらかが勝つ先行馬のレースです。それを外を回って32秒7の切れ味で差し切る。とんでもない競馬でした。 誰よりもドウデュースを知る武豊騎手が、道中は辛抱に辛抱を重ねました。行きたがるのを抑えて、消耗しているようにも見えますが、あの形がこの人馬の形なのです。我慢させれば直線ではじける。天皇賞・秋に続き、信頼の辛抱が究極の末脚につながりました。 中3週でも“攻めた”友道厩舎にも拍手です。1週前追いではCウッドでラスト10秒9。1週前の日曜には坂路でラスト11秒7。調教師としては、調教で動く馬には常に“やりすぎる恐怖”があるものですが、攻めないとG1は勝てません。見事な厩舎力でした。 アイルランドから来たディープインパクト産駒、オーギュストロダンは8着でした。ムーア騎手が中団のいい位置につけましたが、いきなりこれだけの上がり勝負になると、さすがにディープ産駒でも対応できませんでした。ですが、最後に日本で走ってくれたことに感謝ですし、もう1点、A・オブライエン厩舎の調教にも私は驚きました。 東京競馬場に移動してから水、木、金、土と連日、時計になる調教をしていました。普段、アイルランドで行っている調教は当然見られませんので、世界の名門もやはり“攻めている”のだと改めて感じました。 いつか、ドウデュース産駒やオーギュストロダン産駒に武豊騎手が乗るシーンを見たい。そんな夢が広がる、楽しいジャパンCでした。(JRA元調教師)