【静岡】池田新之介監督|小学生時代は色んな種目を幅広く、色んな身体の使い方を体験して
創部120年以上の歴史と伝統を有し、春夏合わせて43度の甲子園出場を誇る静岡高校。そんなチームを指導する池田新之介監督に、中学生を見るときのポイント、小学生時代に大事にして欲しいことなどを聞きました。 「走れる」こと「投げられる」こと ――中学生を見るとき、どんなところを意識して見ていますか? 美しく正しい姿勢で速く走れているか、ボールを正確に投げられるかというところを見るようにしています。「走れる」ということは投げるにしても打つにしても、野球の能力を計る上での一つのバロメーターになります。「投げられる」のも、野球の凄く大きな能力の一つです。ですから中学生を見るときはそういうところを見るようにしています。 ――2年4ヶ月しかない高校野球では投げ方を直すのは難しい? そうですね。投げ方を直すところに時間をかけるのであれば、打つ、守るなど、伸ばしたい部分にエネルギーを使いたいところですよね。 ――打つ方ではどういったところを見ていますか? 打つ方は逆に高校に入学してきてから何とでもなるかなと思っています。先ほど話した走れて、投げられる能力があれば、例え癖のある打ち方をしていても直せると思っています。 ――打つ方では軟式と硬式、特に気にはなりませんか? 軟式であれば一昔前は叩きつけてバウンドさせる打ち方であったり、インサイドアウトで振れていなくてもビヨンドのお陰で打球が飛んでいったりとか、そういう子もいました。でも、そういったことも含めて高校である程度直るかなと思っています。ボールを捉えたり、遠くに飛ばせたり、そういう能力はあるにこしたことはないですけども。 ピッチャーでは軟式の子の方が好きですね。歴代エースを見ていても軟式出身の子が多いんです。 ――技術以外の面で見る部分はありますか? 本院と話をすることができないので内面を見るのはなかなか難しいんですけども、泥臭さみたいな部分、ユニフォームを汚すことに抵抗がないかみたいなところを見ますね。闘志剥き出しな、アグレッシブな野球小僧みたいな子、泥臭い子が好きですね。 ――今の高校生を指導していて、昔と比べての変化などを感じることはありますか? 技術は上がっていないと思います。例えば軟式野球出身の子達は教わっていない事が多いと感じています。そこは中学で教えてもらってほしかった、積み重ねて身につけてきてほしかったなと思う部分があります。シニア、ボーイズなど、硬式の指導者は大学、社会人まで野球をやっていた方が多いので(しっかり教えられている)、中学時代にそこの差ができてしまっているのはあると思います。ですので全体的には技術は落ちているように思いますね。 ――体力面ではどうでしょうか? 体力は昔に比べて上がっていると思います。身体も大きくなっていますから。でも体力にもいろいろありますので、筋力はあるんですけど持久力と柔軟性はないですね。特に腿裏のハムストリングと股関節の柔軟性がないですね。 ――その原因はどんなところにあると思いますか? 昔から言われていますけどトイレが和式から洋式になったとか、畳の上で胡座をかくこともなくなっていますよね。そういった生活スタイルの変化が影響しているのではないでしょうか。 色んな種目を幅広く、色んな身体の使い方を体験して ――将来高校野球で頑張りたいなと思っている子どもは、小学校の時にどんなことをやっておくと良いでしょうか? 柔軟性も大事ですけど、ゴールデンエイジ期に、例えばボールであればボールを使った遊びであったりジャグリングだったり、そういった神経系を刺激するような遊びをたくさんやった方が良いと思います。野球をやるにしても野球だけにとどまらず、サッカーをやったり、バスケットボール、水泳、体操、バドミントンなどいろんなスポーツをやった方がいいと思います。その年齢にあったことをたくさんやるのがいいかなと思います。 ――「急がば回れ」ということですね。高校で野球を頑張りたいのであれば小学校時代は野球だけではなく幅広く色んなスポーツをやる。 そうですね。色んな種目に幅広くチャレンジして色んな身体の使い方を体験して欲しいですね。あとは、親は自分の子どもだけに関わらないことですね。 ――どういうことでしょうか? よくボールの渡し方に例えて親御さんに言わせてもらうんですけど、例えば親が子どもにボールを渡すときに「がんばりな」って自分の手のひらにボールを置いて、それを子どもが上から掴んで欲しいんです、イメージとしては。野球ではボールは上から掴みますから。でも今の親は逆で、子どもに手を開かせて「がんばりな」って手のひらにボールを置いてあげるんです。上から掴むべきボールなのに、手のひらに乗せてもらっていたらボールも正しく投げられないですよね。それに例えて「子どもにしっかり物を掴ませてください。子どもにしっかりと上からボールを掴ませるようなイメージで、お子さんに接してあげてください」と話しています。 ――子どもに持たせるのではなくて、子どもに掴ませることが大事ということですね。 子どもが掴むように親が誘導するのは良いと思うんです。でも露骨に「あなたはこれを持ちなさい」「あなたが持つのはこれです」とやってしまうと、野球が上手い子どもは育たないのではないでしょうか。(取材/写真:永松欣也)
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