1型糖尿病患者 歯の神経治癒が遅れるメカニズム解明 新潟大
次に免疫機能を持つマクロファージの分布を調べたところ、健常なラットでは神経内で炎症を起こすM1マクロファージが減り、修復のために働くM2マクロファージが増えていたが、1型糖尿病のラットではこのバランスが崩れ、M1マクロファージが優勢なままだった。そのため、健全な歯質が形成されず、治療成績が上がらないことが分かった。
再生医療の発達によって、自分の親知らずなどから取った細胞を増殖させ、虫歯に作用させて歯の修復を図る「再生歯内療法」が一部で行われている。大倉助教は「糖尿病患者に炎症が全くない親知らずがあることがレアケースで、現実的な治療ではない」としたうえで、「M1マクロファージとM2マクロファージの分化を適切に誘導するような、もしくは、象牙芽細胞を生み出すような方法が確立されれば治療の成功率を高めてくれるのではないか」と指摘。薬剤師免許も持つ立場から「そういった薬が開発されることに期待したい。いつか虫歯を薬で治療できる日がくれば良い」と話した。
一般に、2型糖尿病患者も虫歯になりやすく、神経の治療の成績があがらないことが多いとされる。大倉助教が外来で診療に当たっていても、「違和感が消えない」など、いつまでも主訴がある患者が多いという。今後は2型糖尿病でも治癒の遅れが同様の仕組みかどうかを研究していく。
研究は科学研究費助成事業の助成を受けて行われた。成果は2023年11月7日の米歯科雑誌「ジャーナル オブ エンドドンティクス」電子版に掲載され、同22日に新潟大学が発表した。