【毎日書評】同じ1ドル=150円なのに、円安だ円高だと変わるわけは?池上彰さんがずばり解説
円安・円高の基準を知っていますか?
2022、23年は円安で輸入品の価格が高騰し、私たちの暮らしに深刻な影響を与えました。海外旅行の費用も跳ね上がり、国内旅行に切り替えるという流れも出てきました。 しかし円相場は、1987年当時も現在も1ドル=150円です(23年11月17日現在)。同じ1ドル=150円なのに、なぜいまは円安で、昔は円高だったのでしょうか? これは、円安・円高は単に以前と比較した言い方だからです。今は1ドル=115円だったのが150円になってしまったから円安と言い、1987年の1ドル=150円は200円だったときと比べたので円高と言ったのです。いくらだから円安、いくらだから円高という決まった基準はありません。1ドル=150円が時によって円安になったり円高になったりするということです。(150~151ページより) 円安は輸出の面でメリットが大きいため、一般的に日本にとってはいいこととされています。しかし22、23年の円安は、あまりいいことではありませんでした。急激に円安が進んだため、輸入品の価格が急騰して私たちの暮らしに大きな影響が出る物価高につながったからです。そのため、「悪い円安」といわれているのです。 一方、輸出産業は海外から部品を輸入して国内で組み立てるケースが多数。したがって輸入する部品の値上がりの影響を受け、輸出が伸びてもあまり利益が出ないという状況に陥っているわけです。(150ページより)
好景気とは、「お金の流れ」がよくなること
ところで、「景気がいい」とはどういうことでしょうか? 端的にいえば好景気とは、お金の流れが良くなること。あるいはお金の回りがよくなることです。 お金がぐるぐる回っているのが、景気が良い状態、逆に、どこかで滞ったり、回りが遅かったりするのが、景気が悪い状態。景気の良い悪いでこういう違いがあるのです。(156ページより) ちなみに「お金は天下の回りもの」ということばがありますが、ここでいう天下は天下人(天下を取った人)や偉い人のことではなく、世の中のこと。金銭は世の中を常にめぐっており、一箇所にとどまることはないといっているのです。いいかえれば、お金が一箇所にとどまっていたり、お金が回らなかったりしたら、それは問題だということ。(154ページより) 冒頭の指摘にもあるようにわかりにくくはあるものの、「経済のきほん」はなかなか人に聞きづらくもあるでしょう。だからこそ本書を活用し、知っておくべきことをきちんと理解してみてはいかがでしょうか? >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: SB新書
印南敦史