【毎日書評】同じ1ドル=150円なのに、円安だ円高だと変わるわけは?池上彰さんがずばり解説
昔は1ドル=360円だった!
2022年、23年の経済ニュースといえば、やはり衝撃的な円安ということになるでしょう。22年3月1日には1ドル=115円だったのに、約半年後の10月21日には1ドル=150円台に。23年も年初は1ドル=130円前後で落ち着いていたものの、そののち急速に円安となり、11月に入って1ドル=151円台に乗せたのでした。 このように現在は円安が大きな問題になっているわけですが、昔は円安や円高がニュースになることはありませんでした。それはなぜ? 誰もが知っているように、円相場は毎日変動しています。ところが、今から50年以上前、円相場は変動しないのが常識でした。戦後はずっと1ドル=360円で固定されていて、円安になることも円高になることもなかったからです。これを固定相場制と言います。(148ページより) 固定相場制をやめ、需要と供給に応じて1ドルの価値が変動する変動相場制に移行したのが1973年のこと。ここから1ドル=360円時代は終わり、以後は円高が進んだのです。1978年には初めて、1ドル=200円を突破しています。つまり円安や円高がニュースで取り上げられるようになったのは、変動相場制になってからなのです。 円高とは、円の価値が高いということ。つまり、日本経済がそれだけ成長したことを意味します。円高は1980年代に入ってさらに進行し、1987年、ついに1ドル=150円を突破しました。この頃の日本は好景気に沸いていました。一方で円高の行き過ぎが問題になっています。(149ページより) 長きにわたって日本の経済成長を牽引してきたのは、製造業を中心とした輸出産業です。しかし円高は、輸出産業にダメージを与えることになりました。たとえば1ドル=200円のとき、200万円の自動車を輸入して1万ドルで販売したとしましょう。 でも円高で1ドル=100円になると、200万円の車のドル建て価格は2万ドルに上がります。価格が上がれば車は売れなくなり、その会社の業績は悪化します。ここからもわかるように、円高が行き過ぎると、自動車を筆頭とする輸出産業全体が大きな打撃を受けてしまうのです。(148ページより)